『死刑問題に関する文献目録』


その時代時代の各論者、論客の関心・問題意識を知る

 本書は、表題通り、死刑存廃問題に関する文献を編纂したものである。辻本衣佐(明治大学法学部兼任講師)が、「死刑に関する文献」と題して、全国犯罪非行協議会(NCCD JAPAN)機関誌等に掲載してきたものを一冊にまとめたものである。

 本書には、1867年から2022年まで150年余の間にわが国において著された死刑問題に関する書籍、論稿がつぶさに拾い集められている。インターネット検索が当たり前になっている今日、それぞれの表題を連ねているだけの本書を俯瞰すれば、その時、その時代時代の各論者、論客の関心や問題意識を知ることができる。

 また、ページをめくり進めると、その当時の学術界や実務当局の有り様が思い浮かび、あるいはその時々の“凶悪”犯罪を思い起こさせてくれるという、ちょっとしたタイムトラベルに誘われる。そうして、死刑という、国家にのみ人命を奪う権限を認めることの正当性と、奪われてはならない絶対不可侵の個人の尊厳の保障との永遠に続くかのような相克を、淡々とまるで横書きのマイルストーンを積み重ねるように綴っている一冊である。

 国連死刑廃止条約が採択されて34年、死刑廃止(停止)国が大多数を占めるようになってきてもなお頑なに存置を続けるわが国において、この問題を考えるとき傍に置かれることをお薦めする。

(ま)

(2023年09月02日公開) 


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