刑事弁護オアシスの誕生
季刊刑事弁護は、1995年1月に創刊した。2019年秋、創刊100号を迎える。創刊の目的は、「絶望的」とまで言われた刑事裁判を、弁護実務から変えていくために、刑事弁護実務に関する最先端の情報と理論を実務家に提供することであった。
1990年に大分県弁護士会は、捜査段階での刑事弁護の充実・強化のために、はじめて当番弁護士制度を創設し、その後全国すべての弁護士会に広がった。
この20年間で、刑事弁護はその質・量ともに着実に充実・強化されたといえる。そして、2018年6月から、勾留事件全件について被疑者国選弁護制度が実現した。
しかし、捜査段階の実務は、一部事件に取調べの録音・録画が実現したとはいえ、いまだ弁護士の立会いが実現されておらず、長期勾留を許す裁判実務とあいまって、あいかわらず捜査側が優位に立っていることは否定できない。
日本の刑事裁判において、いまだ被疑者・被告人の権利や適正手続が十分確立しているとはいえない。その原因は、警察・検察そして裁判官の人権意識の欠如はいうまでもないが、そうした刑事裁判を許している市民一人ひとりにもあるのではないか。マスメディアが日々流す捜査や刑事裁判に関する情報は、相変わらず捜査側にかたよっており、無罪推定など刑事裁判の原則から大きくかけ離れていることもしばしばある。
市民自身が、刑事裁判が適正に行われているかを監視するためには、捜査や刑事裁判に関する正しい情報が必要である。
刑事裁判、とりわけ刑事弁護に関する的確な情報を広く市民に提供することを目指して、本ポータルサイト、『刑事弁護オアシス』を、『季刊刑事弁護』創刊100号を記念して、立ち上げる。捜査・取調べから、裁判、社会復帰まで、その情報と知識の泉(オアシス)を提供したい。
本サイトは、実務家ばかりでなく、刑事裁判に関心のある市民にもひろく支えられてこそ、その目的を達成できるものと確信している。
みなさまのご協力を切に望むものである。
2019年1月
刑事弁護オアシスコンソーシアム
編集代表 成澤壽信
*刑事弁護オアシスコンソーシアム参画団体:現代人文社、(株)TKC