『出所者支援ハンドブック──刑事司法ソーシャルワークを実践する』


「応報型刑事司法」から「問題解決型刑事司法」への転換を

 出所者支援は、刑に服した人を「この社会の人」として受け入れる司法と福祉とが連携して行なわれるものである。しかし、その実態は、出所者やその支援に携る人々に、差別や偏見に基づくさまざまな社会的困難を負わせている。こうした個人の尊厳や基本的人権保障への無関心、無配慮が溢れている状況下で、支援を行なう人々やソーシャルワーカーの強い味方となるべく、その手引書、実践書として著されたのが本書である。

 本書で語られているのは、司法と福祉との相違が両者の連携の阻害要因となっているとか、出所者に良かれと考えて行なう面接や支援が、かえって出所者に対する「侵襲」「暴力」になってしまうこと、はたまたアルコール依存症にみられるような「否認の病」を惹き起こして肝心のケアーから遠ざけてしまうといった、現場経験を踏まえた失敗例を含んだ内容である。出所者との二人三脚の大変さを痛感させられるものである。

 本文は、まず「クライアントの属性から理解する」(Step 1)では、障害者、高齢者、女性という受刑者ごとの特性に着目する。次いで「ソーシャルワーカーとしての支援スキルを身につける」(Step 2)では、出所者支援に必要な、種々の面接方法や情状証人に立つための心得、留意点を併せた入口支援の方法等について、さらに「クライアントの罪種から考える(Step 3)では、クレプトマニアを含めた窃盗事犯、薬物・アルコール依存事犯、性加害行為の三者を取り上げて、それぞれ具体例を提示しながら各々についての留意点や解決策を明らかにしている。

 そして、最後に、編著者の掛川氏が「終章 刑事司法ソーシャルワークに取り組む」で、現在の問題点を再確認するとともに今後のあるべき姿を示唆している。全編を通して「応報型刑事司法」から「問題解決型刑事司法」への転換の必要性が強く訴えられている。

 なお、本書は、『不安解消! 出所者支援』(2018年)、『犯罪からの社会復帰を問いなおす』(2020年)との三部作として企画、出版されたものである。出所者支援者はもとより、刑確定以降にあまり関心がないといわれている弁護士に、併せて読んでいただきたいものである。

(ま)

(2022年05月02日公開) 


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