1980年代の終わりから、刑事司法は激動の時代を迎えた。この時期、当番弁護士制度の創設、被疑者国選弁護制度の実現で刑事弁護活動は飛躍的な発展を遂げた。また証拠開示の拡大、取調べの録音・録画など刑事訴訟法改正で被疑者・被告人の人権保障も充実した。しかし、一方で、少年法改正、通信傍受法改正、司法取引の立法化で捜査権が大幅に拡大・強化されたのもこの時期である。いまだ、被疑者・被告人の人権保障と捜査権の拡大という対立の構図は続いている。刑事司法の激動の時期に研究生活をともに送った大出良知・高田昭正・川崎英明・白取祐司先生が古稀を迎えられたことを記念して、本書では、刑事法、刑事政策、少年法、刑事弁護実務の各分野で、こうした構図を分析し、それぞれの課題を追求する論考を収録する。
【誤判救済・事実認定論】 再審請求手続と「職権主義」 ……斎藤 司 再審請求審における審理義務 ……田淵浩二 再審における証拠の明白性の判断方法・再論――全面的再評価説にたつことの意義 ……関口和徳 ノヴァ型再審における総合評価――大崎事件第三次再審請求特別抗告審決定を契機として ……松宮孝明 7号再審についての覚書 ……新屋達之 えん罪事件の諸問題――東住吉事件の経験を基に ……森下 弘 刑事再審制度の歴史的意義と基本構造 ……髙倉新喜 鳥取ホテル支配人殺人事件最高裁判決と総合評価のあり方――情況証拠による刑事事実認定論(6) ……豊崎七絵 薬物密輸事件における「回収措置に関する経験則」の不合理性――組織行動に関する合理性理解の誤りに対する指摘を中心として ……角田雄彦 刑事裁判官の「合理的疑い」発見能力と無辜の救済 ……渕野貴生 【刑事訴訟法】 公判外供述の証拠使用の制限と証人審問手続……伊藤 睦 刑訴法321条3項の書面に関する一考察 少年事件が捜査遅延によって成人後訴追された場合の救済方法の検討――捜査の違法を量刑事情として考慮することの可否 【刑法・刑事政策・少年法】 【4先生古稀祝賀論文集座談会】 【新旧編集委員座談会】 【4先生年譜・業績一覧】 |
(2020年11月27日公開)