■無罪判決を受けた後、検察の世界では?
本書は元検察官で現在弁護士の著者が書き下ろしたリーガル小説です。
主人公は検察改革を目指し、弁護士から検察官への転身した次席検事。書名の「ナリ検」は「ヤメ検」をヒントにした著者の造語です。
さて、小説は無罪判決を受けた後の某地検内部の状況を軸に展開します。無罪判決を「問題判決」と呼び、控訴するかどうかを全検察官で議論するシーン、いわゆる「控訴審議」は検察官出身の著者ならではの細部にわたる丁寧な描写で、ベールに包まれた検察の実態に迫るものがあります。
「控訴審議」を知る手がかりになるという点だけとっても刑事弁護に取り組む弁護士には、大いに参考となる内容といえます。
さらに検察の体質や組織の上下関係、人間関係などを微細に描くことと並行して、主人公が目指す検察改革とは何かと進むストーリーは、読み応え十分です。そして結末は……。そこまで書くと「ネタバレ」になるので、読んでのお楽しみに。
一言付け加えると、本書の小説としての完成度の高さについては推薦文を寄せられた木谷明氏(元東京高裁判事、弁護士)も絶賛するところです。
一度読み始めると一気にその内容に引きつけられることは間違いありません。
法曹関係者の方にとって職業に関連する内容であるということはもちろんですが、小説として一読願いたい書籍です。
(く)
(2020年10月20日公開)