凶悪犯罪が起こるたびに叫ばれる「厳罰化」は、実は犯罪対策としては機能しない。
犯罪の背景には、差別や格差、孤立、生活苦などの、人としての尊厳に関わる困難な環境が存在する。そこへの対応こそが重要である。
著者はかつて少年鑑別所、少年院、少年刑務所、刑務所などで働き、また国連機関で各国の事情を研究し、現在は大学で研究を続けている。
その豊富な経験と多くの科学的証拠(エビデンス)から、犯罪対策を考える上で忘れてはならないのは、罪を犯す人たちが私たちと同じ人間であり、刑罰を受けた後は地域社会で生活を共にするという事実であると、著者は説く。
そして刑罰について考える際には、そのような人たちにどのような人になって地域社会に戻ってきて欲しいのか、そのために何が必要なのかという視点が不可欠だという。
このような視点から、最近の国会や法制審議会で具体的に議論となっているテーマを中心に、あるべき犯罪対策・刑事政策を考えるのが、本書である。
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(2021年12月17日公開)