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隈慧史くま・けいし福岡県弁護士会・66期
窃盗被告事件
青山玄あおやま・げん東京弁護士会・66期
傷害被告事件
髙見智恵子たかみ・ちえこ東京弁護士会・70期
李世燦り・せちゃん東京弁護士会・68期
準強制わいせつ被疑事件
第16回季刊刑事弁護新人賞は、全国から14件の応募があり、2018年11月4日、現代人文社で選考委員会が行われました。本年度は例年に増してレベルが高い報告ばかりであり、選考委員の中でも活発な議論が行われました。その結果、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞1名が選出されました。
最優秀賞に選ばれた隈慧史さん(66期、福岡県弁護士会)は被告人の訴訟能力を争い、公訴棄却を求めるという、非常に重要でありながら、実践報告例がわずかな分野における粉骨砕身の弁護活動を報告してくれています。裁判所に対する毅然とした対応とともに、模擬冒頭手続を実施して被告人の理解力を確認するといった工夫は、若手にとどまらず、この分野に取り組む弁護人全員にとって、非常に参考になる内容です。
優秀賞には、青山玄さん(66期、東京弁護士会〔執筆時、千葉県弁護士会〕)と髙見智恵子さん(70期、東京弁護士会)が選出されました。
青山さんは、捜査段階での身体拘束の解放に向けた活動から一審での無念の有罪判決、控訴審での逆転無罪に至るまでの活動を報告してくれました。防犯カメラ映像と110番通報の音声を徹底的に検討し、証人の証言を弾劾するケースセオリーを緻密に構築し、逆転無罪まで粘り強く戦った成果が高く評価されました。
髙見さんは、再度の執行猶予判決を付された事件を報告してくれました。弁護活動ももちろんですが、随所に現れる弁護人としての悩みが強い共感を生みました。被告人や家族の気持ちにそれぞれどう向き合うのかといった点のみならず、捜査段階での準抗告認容により国選弁護人の地位を失ってしまう点、判決後の更生支援にどこまで関わるかという点など、制度的な課題も見えてくる報告でした。
特別賞は李世燦さん(68期、東京弁護士会)が選出されました。現地の沖縄まで足を運ぶなどの幅広い事情聴取や、担当刑事からの情報収集など、非常に熱心で積極的な弁護活動に感銘を受けました。
受賞を逃してしまった報告の中にも非常に素晴らしい活動が多々ありました。今後の刑事弁護レポートなどで読者の方の目にも触れる機会があるかと思います。
全体を通じた感想としては、否認事件における公判前整理手続の利用については、もっと積極的でもよいのではないかという意見も出ました。万全の証拠開示を受けるためにも、遠慮は無用です。
刑事弁護の今後の発展のためにも、若手弁護人の一層の活躍を期待します。
* 今回の選考委員は次のとおり。金杉美和(弁護士・京都弁護士会)、川上博之(弁護士・大阪弁護士会)、本庄武(一橋大学教授)、緑大輔(一橋大学准教授)、村井宏彰(弁護士・東京弁護士会)、和田恵(弁護士・東京弁護士会)、 児玉晃一(弁護士・東京弁護士会)、北井大輔(本誌編集長)。
* 本賞は、株式会社TKCにご協賛いただいております。
[論評]
第16回季刊刑事弁護新人賞は、全国から14件の応募があり、2018年11月4日、現代人文社で選考委員会が行われました。本年度は例年に増してレベルが高い報告ばかりであり、選考委員の中でも活発な議論が行われました。その結果、最優秀賞1名、優秀賞2名、特別賞1名が選出されました。
最優秀賞に選ばれた隈慧史さん(66期、福岡県弁護士会)は被告人の訴訟能力を争い、公訴棄却を求めるという、非常に重要でありながら、実践報告例がわずかな分野における粉骨砕身の弁護活動を報告してくれています。裁判所に対する毅然とした対応とともに、模擬冒頭手続を実施して被告人の理解力を確認するといった工夫は、若手にとどまらず、この分野に取り組む弁護人全員にとって、非常に参考になる内容です。
優秀賞には、青山玄さん(66期、東京弁護士会〔執筆時、千葉県弁護士会〕)と髙見智恵子さん(70期、東京弁護士会)が選出されました。
青山さんは、捜査段階での身体拘束の解放に向けた活動から一審での無念の有罪判決、控訴審での逆転無罪に至るまでの活動を報告してくれました。防犯カメラ映像と110番通報の音声を徹底的に検討し、証人の証言を弾劾するケースセオリーを緻密に構築し、逆転無罪まで粘り強く戦った成果が高く評価されました。
髙見さんは、再度の執行猶予判決を付された事件を報告してくれました。弁護活動ももちろんですが、随所に現れる弁護人としての悩みが強い共感を生みました。被告人や家族の気持ちにそれぞれどう向き合うのかといった点のみならず、捜査段階での準抗告認容により国選弁護人の地位を失ってしまう点、判決後の更生支援にどこまで関わるかという点など、制度的な課題も見えてくる報告でした。
特別賞は李世燦さん(68期、東京弁護士会)が選出されました。現地の沖縄まで足を運ぶなどの幅広い事情聴取や、担当刑事からの情報収集など、非常に熱心で積極的な弁護活動に感銘を受けました。
受賞を逃してしまった報告の中にも非常に素晴らしい活動が多々ありました。今後の刑事弁護レポートなどで読者の方の目にも触れる機会があるかと思います。
全体を通じた感想としては、否認事件における公判前整理手続の利用については、もっと積極的でもよいのではないかという意見も出ました。万全の証拠開示を受けるためにも、遠慮は無用です。
刑事弁護の今後の発展のためにも、若手弁護人の一層の活躍を期待します。
* 今回の選考委員は次のとおり。金杉美和(弁護士・京都弁護士会)、川上博之(弁護士・大阪弁護士会)、本庄武(一橋大学教授)、緑大輔(一橋大学准教授)、村井宏彰(弁護士・東京弁護士会)、和田恵(弁護士・東京弁護士会)、 児玉晃一(弁護士・東京弁護士会)、北井大輔(本誌編集長)。
* 本賞は、株式会社TKCにご協賛いただいております。