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伊藤建いとう・たける富山県弁護士会・66期
自動車運転過失傷害被告事件
白井淳平 しらい・じゅんぺい大阪弁護士会・67期
自動車運転過失致死傷・道交法違反被告事件
松本浩幸まつもと・ひろゆき福岡県弁護士会・66期
強制わいせつ被告事件
第14回季刊刑事弁護新人賞は、全国各地から12件の応募がありました。本年度は無罪を獲得した弁護活動報告が5件もありました。新人弁護士による極めて質の高い弁護活動が全国各地で展開されていることが感じられました。
2016年11月13日に現代人文社において研究者および実務家8名からなる選考委員会(*)を開催しました。甲乙つけがたい報告が多く、議論は難航を極めましたが、厳正なる選考の結果、最優秀賞1名、優秀賞2名を選考しました。
最優秀賞の伊藤建さんは、初めての受任事件でありながら、現場に何度も足を運び自分の目で検察官請求証拠の矛盾を見つけ、さらには信号機のシステムという専門的領域についてつぶさに資料を検討し、それを法廷での尋問に活かし、無罪判決を獲得しました。無罪判決の裏には必ずこのような地道な弁護活動があるものです。まさに無罪を主張する事件の“王道”を歩み、初めての受任事件で無罪判決を獲得したという点が非常に高く評価されました。
優秀賞の白井淳平さんの事案は、無罪主張の控訴審弁護事件でした。道交法違反の事案で、第一審において実刑判決が出た事案でしたが、何度も現場に足を運び、23条照会を駆使して証拠を収集し、さらには再現実験を行うなどして第一審の有罪判決とは異なるセオリーを組み立てました。このような弁護活動は第一審の弁護活動とも共通するところがありますが、控訴審は事後審であり、立証制限もある等、非常に難易度が高いものです。その中で、原判決とは異なるセオリーを裁判所が認定して原判決を破棄したのは、まさに弁護活動の賜物であったと言えるでしょう。
同じく優秀賞の松本浩幸さんの事案は、10歳の少女に対する強制わいせつの否認事件という極めて難しい事件でした。“10歳の少女が嘘をつくはずがない”、“なぜ10歳の少女が嘘をつくのか”という誰しもが感じる高い壁に対して、明確なケースセオリーを組み立てて見事に無罪判決を獲得しました。このような事件ではとりわけケースセオリーを確立することが重要ですが、その重要性をしっかりと認識したうえで、説得力のあるケースセオリーを確立して法廷弁護活動を行った点が評価されました。
今回受賞した3作品はいずれも無罪主張の事件で無罪判決を獲得した事件でした。それ以外にも、工夫を凝らした情状弁護活動を実践したケースや、効果的な捜査弁護活動を行って成果を上げたケースなども複数報告されました。その中で、今回受賞した3件は成果もすばらしく、また弁護活動と結果が結びついていた点で受賞に至りました。
来年度も多くの若手弁護士のすばらしい弁護活動が報告されることを期待しています。
* 選考委員は、斎藤司(龍谷大学教授)、笹倉香奈(甲南大学教授)、出口聡一郎(弁護士・佐賀県弁護士会)、金杉美和(弁護士・京都弁護士会)、髙山巌(弁護士・大阪弁護士会)、趙誠峰(弁護士・第二東京弁護士会)、山本衛(弁護士・東京弁護士会)、北井大輔(本誌編集長)。
[論評]
第14回季刊刑事弁護新人賞は、全国各地から12件の応募がありました。本年度は無罪を獲得した弁護活動報告が5件もありました。新人弁護士による極めて質の高い弁護活動が全国各地で展開されていることが感じられました。
2016年11月13日に現代人文社において研究者および実務家8名からなる選考委員会(*)を開催しました。甲乙つけがたい報告が多く、議論は難航を極めましたが、厳正なる選考の結果、最優秀賞1名、優秀賞2名を選考しました。
最優秀賞の伊藤建さんは、初めての受任事件でありながら、現場に何度も足を運び自分の目で検察官請求証拠の矛盾を見つけ、さらには信号機のシステムという専門的領域についてつぶさに資料を検討し、それを法廷での尋問に活かし、無罪判決を獲得しました。無罪判決の裏には必ずこのような地道な弁護活動があるものです。まさに無罪を主張する事件の“王道”を歩み、初めての受任事件で無罪判決を獲得したという点が非常に高く評価されました。
優秀賞の白井淳平さんの事案は、無罪主張の控訴審弁護事件でした。道交法違反の事案で、第一審において実刑判決が出た事案でしたが、何度も現場に足を運び、23条照会を駆使して証拠を収集し、さらには再現実験を行うなどして第一審の有罪判決とは異なるセオリーを組み立てました。このような弁護活動は第一審の弁護活動とも共通するところがありますが、控訴審は事後審であり、立証制限もある等、非常に難易度が高いものです。その中で、原判決とは異なるセオリーを裁判所が認定して原判決を破棄したのは、まさに弁護活動の賜物であったと言えるでしょう。
同じく優秀賞の松本浩幸さんの事案は、10歳の少女に対する強制わいせつの否認事件という極めて難しい事件でした。“10歳の少女が嘘をつくはずがない”、“なぜ10歳の少女が嘘をつくのか”という誰しもが感じる高い壁に対して、明確なケースセオリーを組み立てて見事に無罪判決を獲得しました。このような事件ではとりわけケースセオリーを確立することが重要ですが、その重要性をしっかりと認識したうえで、説得力のあるケースセオリーを確立して法廷弁護活動を行った点が評価されました。
今回受賞した3作品はいずれも無罪主張の事件で無罪判決を獲得した事件でした。それ以外にも、工夫を凝らした情状弁護活動を実践したケースや、効果的な捜査弁護活動を行って成果を上げたケースなども複数報告されました。その中で、今回受賞した3件は成果もすばらしく、また弁護活動と結果が結びついていた点で受賞に至りました。
来年度も多くの若手弁護士のすばらしい弁護活動が報告されることを期待しています。
* 選考委員は、斎藤司(龍谷大学教授)、笹倉香奈(甲南大学教授)、出口聡一郎(弁護士・佐賀県弁護士会)、金杉美和(弁護士・京都弁護士会)、髙山巌(弁護士・大阪弁護士会)、趙誠峰(弁護士・第二東京弁護士会)、山本衛(弁護士・東京弁護士会)、北井大輔(本誌編集長)。