2(2005年)

[最優秀賞]

熱意で守った教師への夢

葦名ゆきあしな・ゆき東京弁護士会・56期

器物損壊被疑事件

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[優秀賞]

障害を正しく理解する裁判を目指して

金岡繁裕かなおか・しげひろ名古屋弁護士会・55期

住居侵入窃盗被告事件

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[優秀賞]

初出勤まであとわずか?!

上條弘次かみじょう・こうじ東京弁護士会・56期

銃刀法違反保護事件

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[論評]

 昨年(2003年)始まった季刊刑事弁護新人賞。今年(2004年)は第2回を迎え、自薦・他薦を含め、全国から8名の応募がありました。2004年11月20日に選考委員会を開き、厳正な審査の結果、標記のとおり最優秀新人賞1名、優秀新人賞2名が決定しました。

 応募総数は第1回より1名増えたものの、決して多いとはいえませんが、第1回同様いずれの応募作からも、刑事弁護にかける熱意が感じられました。

 今年度も選考委員が全ての応募作に目を通して議論を交わした結果、東京弁護士会の葦名ゆき氏(56期)と名古屋弁護士会の金岡繁裕氏(55期)のいずれを最優秀新人賞に選ぶべきかがまず検討されました。

 金岡氏に対しては、ベテラン弁護士も舌を巻く創意工夫に高い評価の声が相次ぎました。また、当然に浮かぶ疑問を放置しなかった姿勢もよかったです。

 これに対して、葦名氏の活動に対しては、金岡氏に比べ創意工夫という点では一歩足りないが、刑事弁護人としての魂のこもった熱意溢れる行動、そして刑事手続が終わった後にも元被疑者に手厚いフォローをしていったことには、一様に胸を打たれました。

 いずれも甲乙つけがたかったのですが、最終的には刑事技術とハートのいずれにより重きを置くかという視点から議論をし、後者により重きを置く見解の委員のほうが多かったこともあり、葦名氏が最優秀賞、金岡氏が優秀賞という結論に達しました。

 もう1つの優秀賞は、東京弁護士会の上條弘次氏(56期)と札幌弁護士会の小林由紀氏(55期)の2名に絞られました。小林氏にも、「被疑者と弁護人の信頼関係が築き上げられていく過程がよく出ている。事実上冤罪を晴らしている結果もすばらしい」「情報収集活動がよく工夫されている」という賞賛意見がありましたが、多くの委員から「短い時間のなかで、時間のやりくりの工夫をしながら、権力が理不尽だと思う怒りも忘れずに、最終的に裁判所を説得できた。初出勤に間に合わせたい、という時間的な緊迫感のあるところの頑張りを評価した」などの意見を得た上條氏のほうが相対的に評価が高く、優秀賞の残り1枠を得ました。上條氏は最優秀賞の葦名氏と同じ東京パブリック法律事務所の所属で、同一事務所ダブル受賞は快挙といってよいでしょう。

 以下、残念ながら選に漏れた方々に対する寸評です。

 西澤博(54期・三重弁護士会) オーソドックスな活動で、日本初の成果も出した。

 鈴木一嗣(55期・札幌弁護士会) 長距離の弁護活動を評価。

 清水谷洋樹(55期・熊本弁護士会) 熊本の広い地域をカバーしながら、頑張ってやっている。

 吉津健三(56期・福島弁護士会) 対応の極めて難しい少年を担当しながら、あきらめることなくよくやっている。

 今回の応募は、東京と札幌から各2名、名古屋、三重、熊本、福島から各1名と、前回に比べ広がりました。他方、前回最優秀、優秀の2名を輩出した大阪弁護士会からの応募がなかったのは残念です。次回も、より広く、多くの応募を期待しています。