憲法記念日に知ろう「人質司法」/角川歴彦氏の国賠弁護団がシンポ開催

小石勝朗 ライター


院内集会で「人質司法は合法的なリンチだ」と訴える角川歴彦氏(中央)=2025年3月4日、東京・永田町の参院議員会館、撮影/小石勝朗

 容疑を認めないと身柄の拘束が長引く「人質司法」で身体的・精神的な苦痛を受けたとして国家賠償請求訴訟を起こしている出版大手KADOKAWA元会長、角川歴彦(つぐひこ)氏(81歳)の弁護団が5月3日、シンポジウム「憲法記念日に知ろう『人質司法』」を東京都内で開く。副題に「中世的人権侵害の実態」をうたい、「人質司法の現実に触れてほしい」と参加を呼びかけている。

「人間の尊厳を傷つけられた」と提訴

 角川氏は東京五輪のスポンサー選定をめぐる贈賄容疑で2022年9月に東京地検特捜部に逮捕されたが、容疑を否認した。翌月の起訴後も勾留が続き、罪証隠滅のおそれを理由に保釈請求は3回却下され、身柄の拘束は2023年4月まで226日間に及んだ。

 この間に予定していた不整脈の手術を受けられなくなったうえ、新型コロナウイルスに感染して衰弱状態に陥っても外部の専門医療機関の受診を認められず、生命の危険にさらされたという。また、長年務めたKADOKAWAの会長職と取締役を退任せざるを得なくなった。

 角川氏は裁判官と検察官の行為で損害を受けたとして昨年6月、国に2億2,000万円の賠償を求める訴訟を起こした。「角川人質司法違憲訴訟」と称し、「憲法違反の人質司法による身体拘束で死の淵にまで追いつめられ、人間の尊厳を傷つけられた」と主張。「この国の非人間的な刑事司法を変えること」を目標に掲げている。弁護団長は、2014年に袴田巖さんに再審開始決定を出した元静岡地裁裁判長の村山浩昭弁護士だ。

角川氏と作家の里見蘭氏、西愛礼弁護士が鼎談

 シンポは「人質司法」の実情を多くの人に伝えたいと企画。「『ここは日本なのだから警察や検察は私たちの人権を守ってくれる』『本当にやっていなければ警察や検察だったら分かってくれるはずだ』。あなたがもしそのように考えているとしたら、ぜひ現実を知ってください」とアピールしている。

 シンポの冒頭に村山弁護団長が挨拶。第1部では「憲法記念日に『人質司法を知ろう』」のテーマで、角川氏と『人質の法廷』の著書がある作家の里見蘭氏、『冤罪——なぜ人は間違えるのか』を最近出版した弁護団の西愛礼弁護士が鼎談し、それぞれの濃密な体験を基に「司法の暗部」をあぶり出す。第2部は「角川人質司法違憲訴訟を憲法&行政法の観点から考える」と題し、弁護団の玉蟲由樹・日大教授(憲法)と平裕介弁護士が対談する。

 5月3日午後1時半〜3時半、東京都千代田区神田神保町1丁目の日本出版クラブで。参加無料、定員50人。申込みは専用フォームへ。空きがあれば当日参加も可能。

◎著者プロフィール
小石勝朗(こいし・かつろう) 
 朝日新聞などの記者として24年間、各地で勤務した後、2011年からフリーライター。冤罪、憲法、原発、地域発電、子育て支援、地方自治などの社会問題を中心に幅広く取材し、雑誌やウェブに執筆している 。主な著作に『袴田事件 これでも死刑なのか』(現代人文社、2018年)、『地域エネルギー発電所──事業化の最前線』(共著、現代人文社、2013年)などがある。


【編集部からのお知らせ】

 本サイトで連載している小石勝朗さんが、2024年10月20日に、『袴田事件 死刑から無罪へ——58年の苦闘に決着をつけた再審』(現代人文社)を出版した。9月26日の再審無罪判決まで審理を丁寧に追って、袴田再審の争点と結論が完全収録されている。

(2025年04月21日公開)


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