11月28日、大阪高等裁判所第3刑事部(裁判長:石川恭司)は、娘(当時2歳)の頭部に暴行を加えて死なせたとして傷害致死などの罪で起訴された父親の今西貴大さん(35歳)に対して、一審の有罪判決(懲役12年)を取消し、無罪を言渡した。
弁護団(主任弁護人:川﨑拓也)は、無罪判決を受けて、「適切に証拠を検討し、強制わいせつ致傷罪・傷害致死罪について不合理な判断をした一審判決の誤りを正した」と大阪高裁判決を高く評価し、検察に対して上告しないよう声明を出した。そして、12月2日から、「検察官は今西事件の無罪判決への上告を断念せよ」署名を呼びかけている。検察官の上告期限は12月12日(木)である。
声明では、つぎの点で、大阪高裁は弁護人らが強く争っていた事件性について、弁護側の主張をほぼ全面的に採用したと分析している。
①傷害罪に関しては、検察官の控訴理由に根拠がないことを示し、女児に生じた骨折について、外力によるものと認定できないとして無罪判決を言い渡した原判決を支持した点、②強制わいせつ致傷罪に関しては、原審で既になされた各証人の証言等を慎重に検討し、肛門裂傷が生じた原因が異物挿入であることの立証が、そもそもなされていないと、原判決の判断構造そのものの問題点を指摘し、さらに弁護側の医師が指摘した皮膚疾患の可能性等についても言及し、それらに対する検討を欠いた原判決を強く批判。双方の立証を踏まえても、異物挿入による肛門裂傷であることの根拠はなお示されていないとして、原判決を破棄自判し無罪とした点。
また、傷害致死罪については、「検察側医師の医学的所見についての証言のみによって、『強い外力』が加わったと推認すること自体に限界があることを明示したものです。この点は、医学的知見によって、揺さぶりといった暴行態様やその犯人まで推測できるかのような議論を展開してきたSBS/AHT仮説の問題性を的確に指摘した」ものと言えるとした。
最後に、声明は、「同様のえん罪事件が引き起こされないよう、本判決の認定が、今後のSBS/AHT事案において、重要な先例として活かされることを期待」すると結んでいる。
今回の大阪高裁の判断は、全国各地で争っている同種事案対して強い影響を与えると考えられる。
なお、今西事件の弁護活動について、関西のテレビ局・カンテレが取材・特集したドキュメンタリー番組がYouTubeで公開されている。
(2024年12月02日公開)