世界死刑廃止デー企画
10月13日、東京・千代田区の星稜会館で、死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90(フォーラム90)の主催で、「世界死刑廃止デー企画 響かせあおう 死刑廃止の声 2018」と題する集会があった。同会館では、同時に「大道寺幸子・赤堀政夫基金 死刑囚表現展」が催された。
今年は、7月6日、26日の2日間で13名ものオウム事件死刑囚が処刑されたという厳しい現実の前で、集会の主催者や参加者には、死刑廃止運動をどう持続的に盛り上げていくのかが大きな課題だった。
死刑廃止に向かう世界の動きとは?
集会のはじめに、アムネスティ・インターナショナル日本支部の山口薫さんから、死刑廃止についての世界の動きが紹介された。その冒頭、ワシントン州の最高裁判所が10月11日、「人種的に偏りがある」として死刑を停止する判断を下したことに触れ、同州は米国で死刑を禁止する20番目の州となったことを報告した。
世界の死刑廃止の動きの特長として、現在、アフリカ諸国では、死刑廃止が進んでいるが、中国を筆頭にアジア諸国、中東諸国では遅々として進んでいないことを明らかにした。この地域では、全面的死刑廃止のハードルは高いので、まず薬物犯罪での死刑適用を廃止するよう働きかけたいと提言した。
2020年までに死刑制度の廃止を…
ついで、日弁連死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部の加毛修弁護士が、「2020年までに死刑制度の廃止を目指し、終身刑の導入を検討する」とする昨年の日弁連人権大会宣言を紹介した後、日本の国会での死刑廃止への議員の動きが鈍いことを憂慮する発言があった。そして、来年早々には、英国から死刑廃止を進めてきた英国議会の議員が来日するので、その機会に日本でも国会内に死刑廃止に向けた議員連盟をつくる応援をしたいと締め括った。
報告の最後では、6月に静岡地裁の再審決定が取消された袴田事件の支援者から、再審の現状と袴田さんの拘置について報告があった。検察官は特別抗告審での意見書の中で、東京高裁決定は再審を取消しておきながら、拘置取消し決定を取消さなかったことは論理矛盾だと強く批判しているが、弁護側は、袴田さんの再拘置を阻止するためにあらゆる手段を使って奮闘していることを強調した。
オウム事件について…幸徳秋水など12名執行の逆事件を上回る
その後、本日の集会のメインイベントである 「オウム13人執行で時代はどう変わるか」と題する、弁護士の安田好弘さんとジャーナリストの青木理さんの対談が行われた。
安田さんは、オウム事件死刑囚13名執行は幸徳秋水など12名執行の明治の大逆事件を上回る大量執行であることを指摘し、大逆事件以降、日本社会が政治的反動の渦の中に飲み込まれていったことを明らかにした。今回、マスメディアや知識人の反応もほとんどなく、日本社会がこれからどうなるか心配であるとしぼりだすように発言した。
それに対して、青木さんは、ジャーナリストの一員として責任を痛感しているが、まずは、ジャーナリストとして死刑という事実をしっかり記録して、伝えることを持続することがその答えであると決意を述べた。
2人とも、今後の死刑廃止へ向けた方策の一つは、死刑執行までの法務省内でのプロセス、刑場の公開など死刑制度に関する情報公開と、再審請求中に執行しないなど死刑執行手続を定める法案の立法化が喫緊の課題だと意見交換した。
死刑囚の公募作品を見ながら論評を行う
集会の最後に、「死刑囚の表現をめぐって」と題して、死刑囚の絵や詩など芸術活動を論評する選考委員会が公開でなされた。スクリーンに映し出された、「大道寺幸子・赤堀政夫基金 死刑囚表現展」に公募された一つ一つの作品を見ながら、池田浩士、加賀乙彦、北川フラム、太田昌国各氏が論評を行った。
(2018年10月16日公開)