「人質司法」めぐって、YouTubeで、郷原信郎弁護士と高野隆弁護士が対談


 このほど、ゴーン元日産社長の弁護人であった高野隆弁護士が『人質司法』(角川新書)を出版した。

 被疑者は一度逮捕されると、取調官の筋書き通り認めないと、長期勾留、自白強要、さらに弁護士以外の家族や友人との接見禁止──この恐怖の三角地帯に閉じ込められる。逃れるためには、虚偽自白せざるを得なくなる。これらは弁護活動を行う上で弁護人の足枷となる。この現象を「人質司法」と呼ぶ。現象といったが自然現象ではない。憲法を知っているはずの裁判官が日常的に行なっている社会現象である。

 いつ頃からこの言葉が使われるようになったか定かでないが、法曹界では、それを肯定すると否定するとにかかわらず、誰でもが知っている、ある種の業界用語である。この用語は、弁護士向けの実務総合雑誌である『季刊刑事弁護』創刊号(1995年)でも2つの論文に現れている。

 高野弁護士はこの本のなかでこの「人質司法」がなんであるか、どうしてそういうことが日本の刑事裁判のなかで起こっているのか、日本の刑事裁判の歴史を紐解き、さらに海外の制度との比較を通じて縦横無尽に展開している。

 この本をめぐって、元検察官の郷原信郎弁護士が著者の高野弁護士とYouTubeで対談をおこなっている。対談は、各30分の前編と後編で構成され、郷原弁護士が自分の検察官時代の取調べの経験などをまじえて、高野弁護士に、出版の意図などを聞いていく。また、ゴーン元社長は、あれほどのリスクを覚悟で、裁判がはじまる前になぜ海外へ逃亡したのか。そのなぞにも迫る。なお、刑事弁護オアシスでは、ゴーン元社長の保釈をめぐっては対談「ゴーンさんの保釈はどのように獲得したのか──人質司法の原因とその打破の方策」があるので、参照されたい。

○【高野隆弁護士と語る「人質司法」と「ゴーン氏事件」(前編)】
 https://youtu.be/sr_0REh3FTw

○【高野隆弁護士と語る「人質司法」と「ゴーン氏事件」(後編)】 
 https://youtu.be/aNRHxyB_O00

(2021年07月16日公開)


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