刑事施設での新型コロナウイルス対策を徹底するとともに、被告人や受刑者の面会を制限する場合には代替措置を講じるよう、日本国民救援会とNPO法人・監獄人権センターが相次いで意見表明した。刑務所や拘置所、警察の留置場は「3密」の条件がそろった最も感染リスクの高い施設だと指摘し、被収容者と職員の生命・健康の確保を要請。また、法務省による面会制限が外部交通の一方的な遮断にあたると批判し、基本的権利の保障を訴えている。
国内ではこれまでに、警視庁渋谷警察署の留置場で容疑者の集団感染が判明したほか、各地の拘置所や刑務所で被告人や刑務官の感染が確認されている。世界的な感染の拡大を受け、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)と世界保健機関(WHO)は3月に、刑事施設での感染防止策や処遇の指針となる「暫定ガイダンス」を出しており、両団体の意見はこうした国際的な潮流も踏まえた内容だ。
国民救援会が4月27日に出した要請書は森雅子法相宛てで、再審・えん罪事件全国連絡会との連名。政府が指定した13の特定警戒都道府県にある刑務所や拘置所などが受刑者や被告人に対し弁護士以外との面会を制限していることに、抗議の声が寄せられていると伝えるとともに、東京拘置所では未決の被告人の時には認められていたマスク着用が既決の受刑者になると禁止されるといった事例を挙げて「感染防止とは真逆な処遇が行われている」と対応を批判した。
そのうえで、被収容者にPCR検査を実施して正確な感染状況を把握することや、マスクを配布し着用を認めること、3密の状況での刑務作業を中止することなどを求めた。受刑者と家族・支援者らとの面会の代替手段として、刑事収容施設法が規定する電話によるアクセスを提案し、事前の検温やマスク着用の義務化といった感染防止措置を取ればアクリル板越しの面会も可能との見解を示した。
また、警察はできるだけ身柄の拘束をせずに在宅の捜査をするように、検察もできるだけ身柄拘束の請求をやめ、裁判所の保釈決定が出た場合は従うように、要請している。
一方、監獄人権センターは4月28日に声明を発表した。
感染拡大を防ぐには「施設内の人口密度を下げることが効果的」と強調。有期刑の3分の1を経過した受刑者には可能な限り早期の仮釈放を実施し、逃走・証拠隠滅のおそれの低い被告人の勾留を取り消すなど、釈放を推進するよう提唱した。医師らが配置されていない警察の留置場の容疑者や被告人についても「釈放を真剣に検討する必要がある」とし、「代用監獄」の取扱いの廃止も主張している。
面会制限に対しては、とくに出所を間近に控えた受刑者にとって「社会復帰を支える家族や友人、身元引受人、雇用主、入所する施設担当者とのコミュニケーションは命綱であり、休止・ 断絶されてはならない」と指摘。電話による外部交通など代替措置の早急な導入を促した。
感染拡大防止策として刑事施設の居室でのマスク着用を挙げ、被収容者が感染して重症化した場合は速やかに外部の医療機関へ移送し入院させるよう求めている。
(ライター・小石勝朗)
(2020年05月07日公開)