季刊刑事弁護新人賞は、今年で18回を迎える。1月20日、その募集要項が発表された。要綱は従来通りで、応募資格は2020年7月31日現在弁護士登録から5年以内の方(ただし、レポートで取り上げる事件は、登録から3年以内に受任したものであること)、締切は自薦の場合が7月31日、他薦の場合は6月30日となっている。受賞者には賞金と副賞のフクロウの置き物が贈られる。
新人賞応募作品は、ケースセオリーに基づく弁護活動、福祉との連携などそのときどきの刑事弁護活動のトレンドが反映されている。今年はどんな作品が応募されるか期待したい。
第17回の受賞者は、最優秀賞・久保田洋平弁護士、優秀賞・輿石祐司弁護士、特別賞・加藤聡一郎の各弁護士です。授賞式は、2019年11月2日、株式会社TKC東京本社において、季刊刑事弁護創刊100号記念模擬裁判員裁判と同時に開催されました。受賞作品は、季刊刑事弁護101号に掲載されている。 なお、これまでの受賞者は季刊刑事弁護新人賞受賞者一覧でみることができる。
最優秀賞:久保田洋平(くぼた・ようへい/第一東京弁護士会)
このたびは、すばらしい賞をいただきまして大変光栄です。この賞に関わられたすべての皆様に、感謝申し上 げます。まだ修習生だった頃、「最初の事件に注ぎ込んだ時間とエネルギーが、一つの事件に注ぎ込める自分の最大値になる」と言われました。
受賞レポートの事件は、私が初めて担当した裁判員裁判対象事件です。初めてゆえの拙さもありましたが、初めてだからこそ、やりきることができた、そう感じています。そんな思い入れのある事件でこの賞をいただけたことが、とても嬉しいです。これからも、当時の情熱を忘れずに、より優れた弁護活動ができるよう、日々励んでいきたいと思います。
優秀賞:輿石祐司(こしいし・ゆうじ/大阪弁護士会)
このたびは、新人賞優秀賞という過分な評価をいただき、大変光栄に思います。修習生時代から、刑事事件で悩んだ際は、まず季刊刑事弁護を手に取り、諸先輩方の記事や実際の弁護活動等を参考にさせていただいておりました。今回の無罪判決を獲得するうえで、ケースセオリーの構築や被告人質問のコツなど本誌から学んだところが多々あります。
折に触れて、本誌を通じて諸先輩方の刑事弁護道を拝読し、否認事件を戦い抜く勇気と情熱もいただきました。今後も、納得のいく弁護活動ができるよう、研鑽を積んでゆきたいと思います。
特別賞:加藤聡一郎(かとう・そういちろう/第一東京弁護士会)
素晴らしい賞をいただき、大変光栄です。私の担当案件は、被疑者段階の弁護活動でした。過去の季刊刑 事弁護新人賞の受賞作は被告人段階が主であったことから、当初は応募しようか迷いました。
しかし、否認事件での速やかな身柄解放と不起訴という良い結果が得られましたので、思い切って応募してみました。今回の受賞を励みに、被疑者弁護では、早期の身柄解放を目指して、充実した弁護活動ができるように、より一層努力していきたいと考えております。
◎季刊刑事弁護新人賞の沿革——————————————-——
1997年4月、伯母(うば)治之・児玉晃一両弁護士が、詐欺被疑事件において接見妨害を行った検察官と違法な接見指定を看過して準抗告を棄却した裁判官の責任を追及すべく国家賠償訴訟を、東京地方裁判所に提起した(詳しくは、児玉氏のレポート・季刊刑事弁護11号105頁参照)。
この訴訟で、2000年12月、東京地方裁判所は国に対して、伯母弁護士への慰謝料として10万円の支払いを命じたが、児玉弁護士の請求を棄却した。続く控訴審では2002年3月、伯母弁護士への慰謝料を増額し25万円の支払いを国に対して命じたが、児玉弁護士の請求はまたも棄却された。
これに対して、両弁護士は、児玉弁護士の請求は棄却されたものの判決内容を考慮して、上告せず、判決が確定することになった。
その後、同弁護団と両弁護士は、賠償金25万と全国の弁護士からのカンパの残余金を、全国の新人弁護士の励みにして欲しいという願いから、新人賞の賞金として現代人文社に託した。これを基金にして、2003年に「季刊刑事弁護新人賞」が創設された。
なお、第10回(2012年)から㈱TKCが協賛している。
(2020年1月29日 公開)
(2020年01月29日公開)