4月21日、法制審議会―刑事法(再審関係)部会が初会合


再審制度の見直しに向けた法制審議会―刑事法(再審関係)部会の初会合に出席した鴨志田祐美弁護士=2025年4月21日、東京都千代田区の法務省(朝日新聞/時事通信フォト)


 4月21日、法務省内で、法制審議会―刑事法(再審関係)部会の初会合が開かれた。鈴木馨祐法務大臣が審理の長期化などが指摘されている再審制度を見直すため、法改正の検討を法制審議会に諮問したためである。

 部会委員は14人[1]で、刑事法学者、警察・法務検察、裁判所関係者、弁護士で構成されている。袴田事件で2014年に再審開始を決定した村山浩昭弁護士(元静岡地裁判事)、日本弁護士連合会の再審法改正推進室長の鴨志田祐美弁護士(大崎事件弁護団)の二人が委員に入ったことは意義あることである。しかし、刑事法学者では、「大崎事件第四次再審請求にかかる特別抗告棄却決定に対する抗議と、すみやかな再審法改正を求める学者声明」を出した研究者は誰一人として入っていない。

 この点について、成城大学法学部の指宿信教授は、つぎのように指摘する。

 「袴田巖さんの死刑確定から40年以上経ってようやく再審無罪が確定したことを受けて、再審法改正は待ったなしです。世論を見ても改正を求める声は大きい。これまで頑なに改正の必要がないと公式に答弁してきた法務省が今回手のひらを返したように法制審に諮問することになったのは、検察に不利な法案が作られないよう議連主導の動きを封じ込める狙いがあると言わざるをえません。

 これまでも法制審の刑事系部会がそうでしたが、本来、取り上げる論点の専門家こそ議論に加わるべきなのに入らない。今回の部会でもいわゆる刑事法研究者と呼べるのは委員5人幹事2人ですが、その中に再審に関して出版したり学術論文を書いたり、科学研究費を獲得したような人はいません。それは刑事法の研究者として誤判救済について問題意識がないことの現れでしょう。

 袴田事件以外にも21世紀に入って布川、東電、足利、松橋、東住吉、湖東記念病院と著名再審無罪事件が相次いでいるにもかかわらず、こうした刑事司法の病理現象ともいうべき誤判について学問的に無関心と言わざるをえません。他方、今回70名の刑事法学者が改正を急ぐよう賛同されましたが、賛同者にはこれまで再審について研究し、著書論文を刊行してきた研究者が多く含まれています。こうした学者の方々こそ法制審に入って議論すべきです。法制審の人選は妥当と思えません」。

 法制審が開かれたことで、今後、「えん罪被害者のための再審法改正を早期に実現する議員連盟」(会長:柴山昌彦。以下「議連」という)による「議連ルート」と「法制審ルート」が平行して、再審法改正についての審議を重ねることとなった。

 刑事弁護オアシスで連載している鴨志田弁護士は、法制審議会の委員になったことと、この2つのルートでの審議についてコメントした。

 「法制審で再審法の見直しに向けた議論が始まったことを、マスコミの多くは好意的に報じた。しかし、再審法改正に極めて消極的であった法務省が、なぜこのタイミングで法制審の部会を立ち上げたのか、その真意を冷静に見極める必要がある。

 すでに国会内では超党派の議連が改正法案の準備を進め、今国会への上程が視野に入って来た。入会議員も国会議員の過半数を上回る384名に達している。

 法制審への諮問事項として例示列挙された3項目(再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧及び謄写に関する規律、再審開始決定に対する不服申立てに関する規律、再審請求審における裁判官の除斥及び忌避)は、議連が準備している改正案の項目と一致している。唯一の立法機関の構成員たる国会議員が真摯に検討している改正案を、法制審が専門的見地から、さらに充実させる形で事実上後押しするのなら問題はないが、議員立法による法案提出の妨げとなったり、議員提出法案の内容を矮小化したりするような方向に作用することはあってはならない。

 長きにわたり再審支援を行ってきた日弁連の委員として、再審制度の不備が冤罪被害者にもたらす圧倒的な理不尽を、立法事実という形で法制審での議論に反映させていきたい」。

 マスメディアは、部会では6月中に論点整理をまとめる見通しであると、報じているが、議連からは、本年3月24日、「刑訴法改正の要綱案」が提示されている。冤罪被害者を確実に救済する再審法改正を早期に実現するためには、国会での議論が尊重されるべきである。

注/用語解説 [ + ]

(2025年04月25日公開)


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