全国で、再審法改正の動きが高まっている。昨年9月の袴田再審の無罪判決以降、全国の地方自治体議会で、国に再審法改正を求める意見書の採択が加速している。
日本国民救援会の調べによると、同意見書を採択した地方議会は、2024年12月28日で、19道府県、249市、189町、46村、2区の505地方議会に上っている。全国の1,741議会の約29%に相当する。道府県は、北海道、岩手、宮城、群馬、栃木、山梨、長野、静岡、愛知、岐阜、三重、石川、福井、大阪、京都、滋賀、岡山、奈良、佐賀である。
都道府県レベルでは、袴田事件の地元の静岡県内では静岡市、浜松市など全35市町議会で可決されている。さらに、京都府下の27全議会で昨年末までに採択されている。
東京の世田谷区では、2024年6月3日、「再審法改正を求める世田谷区民の会」が「再審法改正を求める意見書を国会・政府に提出することを求める陳情書」と賛同署名を同区議会企画総務常任委員会に提出。同委員会で、同会代表の新倉修・青山学院大学名誉教授が趣旨、世田谷区在住の中澤宏さん(再審法改正をめざす市民の会事務局員)が布川事件に触れながら再審制度の問題点をそれぞれ説明し、同年7月2日、趣旨採択された。ついで10月18日の本会議でも趣旨採択され、同議会は11月11日、議会議長名で「再審法改正を求める要望書」を衆参両院議長、内閣総理大臣、法務大臣など関係機関あてに送った。
その内容は、以下のとおりである。
「無実の人が誤った捜査・裁判によって自由を奪われ、仕事や家庭を失い、築き上げてきた人生や生命までも奪われる冤罪は絶対にあってはならず、冤罪被害者は速やかに救済されなければなりません。
しかし、再審開始決定が検察官の不服申し立てにより、取り消される事例も少なくなく、袴田事件においては、2014年の静岡地裁の再審開始決定から、この決定が確定したのは2023年であり、気の遠くなるような年月がかかっている実態があります。
2024年9月26日静岡地裁は袴田巖氏に再審無罪判決を言い渡し、同年10月9日に検察官が上訴権を放棄したことにより同判決が確定しました。また、10月23日には、福井女子中学生殺人事件の再審開始が決定しており、再審や冤罪被害に市民の関心が高まっています。
こうした中、捜査機関の手持ち証拠の開示と再審開始決定に対する検察の不服申し立て(上訴)の取扱い等、再審手続きの整備を行うことは喫緊の課題です。
よって、世田谷区議会は国会及び政府に対し、冤罪被害者の一刻も早い救済のため、再審法(刑事訴訟法)の速やかな改正を実現することを求めます」
前述の中澤さんは、この活動について、つぎのように語っている。
「昨年4月から、陳情署名や渋谷協同法律事務所の弁護士を招いて再審法の学習会など活動を始めました。特に苦労したところはありませんが、テーマは党派を超えているものですから、区議会の全会派の賛成を得るべく、請願ではなく陳情という形式をとりました。お陰様で本会議では、継続審議扱いの自民、公明と一会派を除いて、50議席中27議員の賛成を得ました。議長名の要望書の内容は、わたくしたちの陳情書とは若干トーンがソフトになっていますが、当初の目的を達成したと思います」
(2025年01月16日公開)