再審法改正をめざす市民の会は、9月28日、袴田再審の無罪判決(9月26日)を受けて、声明「袴田巖さんの再審無罪を即座に確定し、再審法改正を加速しよう!」を公表した。
同声明は、まず、静岡地裁(國井恒志裁判長)の無罪判決に対して、「最大の争点であった『5点の衣類』について、捜査機関が関与した証拠ねつ造という認定で第二次再審請求審(静岡地裁・村山浩昭コート)、差し戻し即時抗告審(東京高裁・大膳文男コート)を引き継いだだけでなく、袴田さんの実家から『発見』されたズボンの共布、および確定審が証拠とした自白調書(検察官調書)をくわえ『3つのねつ造』として、より踏み込んで、捜査機関による証拠のねつ造を認定した点は、特筆に値する」と高く評価。
そして、同声明は、証拠開示制度と検察官不服申立て(即時抗告)に関する再審法の不備に言及。
1981年に申し立てた第一次再審請求では、2008年の特別抗告棄却(最高裁第二小法廷)による終結まで、27年も争われたが、その間ただの一つも証拠開示がされなかった。ところが、2008年4月に申し立てた第二次請求では、600点余りの証拠が開示され、その中に5点の衣類の発見時のカラー写真ネガも存在していた。このことが、2014年3月27日の画期的な再審開始決定と死刑・拘置の執行停止に結び付いた。
「第一次請求時に証拠開示が行われていれば、検察が隠し持っていた証拠を活かし、はるかに早く正しい結論を導き得ていた筈であるし、第二次再審請求などという無駄は、はなから無用だったことになる」と、批判している。
袴田再審では、東京高裁が2014年3月の静岡地裁開始決定を取り消し、さらに最高裁が高裁に差し戻した後、ようやくまた静岡地裁の開始決定の結論に戻る(検察側即時抗告棄却)のに、9年の歳月を費やした。
「無実の人が、自ら潔白を証明しなければならない、ということ自体がとてつもない不条理である。さらにそのために、かくも無意味な月日と労苦を押しつけることは、加重される刑罰のようなものだ」として、検察官の再審開始決定に対する不服申立て制度の廃止を訴える。
日本では、検察は再審公判の無罪判決に対して、通常審と同様、控訴することが認められている。
検察は、現在のところ、この画期的な無罪判決に対して控訴するかどうかを検討中である。
この点について、声明は「これ以上控訴まで許されるというのは、法制度のほうが間違っている。もはや、人道上の犯罪の領域であろう」と、厳しく批判している。
最後に、検察に対して、控訴を断念し、袴田さんの無罪判決をただちに確定させることを求めるとともに、証拠開示制度の確立と、検察官の不服申立てを禁止する再審法(刑事訴訟法第4編)の改正を強く訴えている。
そのほか、一般財団法人イノセンス・プロジェクト・ジャパン(理事長:石塚章夫)が「袴田巌さんの再審無罪判決を受けて──一刻も早く無罪判決の確定を求める声明」、日本国民救援会中央本部、同静岡県本部、再審・えん罪事件全国連絡会が連名で「袴田巖さんの58年に及ぶ人権侵害を救済した再審無罪判決を受けて」、一般社団法人日本ペンクラブ(会長:桐野夏生)が「いますぐ再審制度の抜本改正を」、それぞれ声明を公表している。
また、法律家団体では、日本弁護士連合会(会長:渕上玲子)が「『袴田事件』の再審無罪判決を受けて、検察官に対して速やかな上訴権放棄を求めるとともに、政府及び国会に対して改めて死刑制度の廃止と再審法の速やかな改正を求める会長声明」、静岡県弁護士会(会長:梅田欣一)が「袴田巖氏に対する無罪判決の早期確定のため、検察官に上訴権の放棄を求める会長声明」、自由法曹団(団長:岩田研二郎)が「袴田事件再審無罪判決を歓迎し、検察官が控訴をしないことを求める声明」、それぞれ声明を発している。
(2024年10月01日公開)