3月23日(土)、創志学園高校三門校舎(岡山市北区)において、神戸女学院(兵庫)、済美平成中等教育学校(愛媛)、創志学園の3校による文学模擬裁判の交流戦が行われた。
今大会で取り上げた事件は、松本清張『相模国愛甲郡中津村』『不運な名前』をモチーフに、明治時代に起きたゲルマン贋札事件の被告人「熊坂長庵」に焦点を当て、通貨偽造罪・同行使罪の有罪無罪を争う内容である。創志学園新校舎の杮落しともなった。
午前中は神戸女学院(検察)対創志学園(弁護)、午後は済美平成(検察)対神戸女学院(弁護)の試合が行われた。開廷に先立ち、甲山事件冤罪被害者の山田悦子氏より「刑事裁判の目的は無辜の不処罰にある。明治新政府の犠牲になった熊坂長庵の人間の尊厳の回復を図ってほしい。人間の尊厳は法の精神が有す至高の観念である」というメッセージがあった。その願いを代弁するかのように、創志学園の被告人像は漫画『美味しんぼ』の「海原雄山」のような胆力ある長庵、神戸女学院のそれは法廷で短歌を詠みあげるような芸術至上主義の長庵であり、それぞれ法廷の「主人公」としての存在を示していた。また済美平成の準備、当日の様子は学校HP「News&Topic」に詳しく紹介されている。
「市民参加型」という趣旨を反映して参加者は、カウンセラー、元大学教員、高校教員、保護者、高校生、ジャーナリスト等多様な方々が傍聴された。裁判員は参加者や各校生徒が務めた。
試合終了後の交流会では、対戦校同士が互いの試合での尋問などを振り返りながら感想戦を展開した。各校が文学模擬裁判の準備をどう進めているか、被告人や証人の役作りをどのように工夫しているかなどの裏話も披露された。「文学模擬裁判日本一の神戸女学院に勝つにはどうしたらいいのか」という問いかけに対しては、裁判官役の伊東隆一氏(弁護士)や宮田拓氏(高校教員)から、違和感や疑問を抱きながら資料を読んでいくことやその方法についてのアドバイスがあった。ある参加者は今回の催しの感想として次のように述べている。
「参加してみなければ感じることのできない、感動と興奮のつまった1日でした。(中略)高校生たちに脅威を感じます! 神戸の女子生徒さんは大胆かつチャーミング、愛媛の生徒さんは伸びしろがたくさん! 岡山の生徒さんも輝いていました。最後の全体振り返りがまたまた好い雰囲気で、すこぶる楽しかったです」
参加者同士が響き合う交流会となった。
(2024年04月09日公開)