「第21回季刊刑事弁護新人賞」受賞者決まる。授賞式・記念セミナーは3月3日に開催!


写真のふくろうの置物は、副賞として受賞者に授与される。

 第21回季刊刑事弁護新人賞(主催:現代人文社、協賛:株式会社TKC)は、最優秀賞に西愛礼さん(大阪弁護士会・68期)、優秀賞に湯浅彩香さん(大阪弁護士会・72期)と決まった。

 今回の新人賞には、全国から10名が応募した。内訳は、東京4件、神奈川1件、愛知2件、大阪3件である。

西愛礼(にし・よしゆき)さん
湯浅彩香(ゆあさ・あやか)さん

 西さんの事案は傷害被告事件である。被告人が、被害者に対し、拳骨で顔面を殴る暴行を加え、左眼窩底骨折等の傷害を負わせたという公訴事実が争われた。被害者供述の信用性が争点となったが、その弾劾に成功し、無罪を獲得した。

 受賞について、西さんはつぎのようなコメントを寄せている。

 「私は裁判官時代から『季刊刑事弁護』が大好きです。その新人賞に選出いただきとても光栄に存じます。

 私が担当した『スナック喧嘩犯人誤認事件』は、酔っ払いの喧嘩を制止しようとした依頼者が暴行の犯人と間違われてしまったという冤罪事件でした。

 私はその弁護活動を通じて、冤罪はとても身近で、どこにでも生じ得ることを実感しました。私も酔っ払いの喧嘩を制止しようとして犯人に間違えられてしまうかもしれませんし、反対に犯人を間違えてしまうかもしれないと思ったのです。そのようなどこにでもある冤罪事件を一件でも防がなければならないという思いで弁論要旨と新人賞の原稿を書きました。この原稿が新人賞という形でたくさんの人に読んでいただけることを通じて、一件でも多くの冤罪の予防と救済に繋がればと思っております。

 また、私は裁判官経験がある分少し遅れた『新人』ではありますが、今回の受賞が将来の元裁判官・元検察官の弁護士による季刊刑事弁護新人賞への応募にもつながり、刑事司法をより多角的に盛り上がることに繋がれば幸いです。

 今回、無罪判決を得ることができ、またこのような賞を頂けたのはご指導いただいた刑事弁護教官と相弁護人のおかげです。どうもありがとうございました」。

 また、湯浅さんの事案は、傷害被告事件である。車同士の走行トラブルを発端に、被告人が相手方に対し、持っていたモンキレンチを複数回振り降ろしてその頭部を殴るなどし、左頭頂骨外板陥没骨折等の傷害を負わせたという傷害の公訴事実が争われた。正当防衛の成否が争点だったが、第一審では認められなかった。控訴審で、第一審の証拠評価の不合理を示すために再現実験などをし、逆転無罪を獲得した(詳しい選評は季刊刑事弁護117号8頁を参照)。

 受賞について、湯浅さんはつぎのようなコメントを寄せている。

 「優秀賞をいただき、大変光栄に思います。

 この事件では、証拠を精査し、再現や実験をして、一審判決の事実認定の不自然さ・不合理さを指摘しました。また、理論面からも、被告人の言い分が認められた場合には正当防衛が成立することを、過去の判例等を調査し精査した上で主張を行いました。まさに弁護士になる前に思い描いていたような刑事弁護活動ができたと思います。結果として無罪判決が下され、私の中で心に残る事件の一つとなりました。一生懸命やってよかったと思えた事件であり、今後も刑事弁護を頑張っていきたいと思えた事件でした。

 私にとって大きな存在であるこの事件のレポートが、『季刊刑事弁護』に掲載していただけることになり、記事として残すことができたことも大変うれしく思います。刑事弁護では思うように結果がでないこともありますが、そんなときは『季刊刑事弁護』117号を見返して、この事件を思い出し、報われることを信じて頑張ろうと思います。

 優秀賞をいただけたことを励みにするとともに、優秀賞受賞者という名に恥じないよう、今後も精進していきたいと思います」。

 いずれのレポートも、季刊刑事弁護117号(2024年1月20日発売)に掲載される。また、過去の受賞作は、本サイトの「季刊刑事弁護新人賞」のコーナーで見ることができる。

 新人賞授賞式と同時に行われる、刑事弁護フォーラム、現代人文社共催、(株)TKC、刑事弁護オアシス協賛の記念セミナーは、3月3日(日)14:00より、東京会場(東京・飯田橋)とオンラインのハイブリットで行われる。今回は、千葉県弁護士会の菅野亮弁護士と千葉大学社会精神保健教育研究センター教授の五十嵐禎人医師による「責任能力」についてのセミナーである。お申し込みはこちらから、締切は2月26 日(月)17:00までである。

(2024年01月12日公開)


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