9月24日(日)、NHK総合(東京)が大川原化工機「不正輸出」冤罪事件について、警察関係者などの証言を取材し、その原因を追求する番組を放送した(「見逃し」配信中。10月1日〔日〕午後9時54分まで)。9月28日(木)午前0時35分 〜 午前1時30分に再放送される。
同事件は、2020年3月、「軍事転用できる噴霧乾燥機を中国などに経済産業省の許可を得ずに不正輸出した」と外国為替及び外国貿易法(外為法)違反容疑で大川原化工機株式会社・社長ら3人が逮捕・起訴された事件である。被疑事実を認めなかった3人は逮捕から11か月に及ぶ長期勾留された。典型的な人質司法であった。しかし、2021年、検察官が起訴取消しをする異例の展開となった。大川原社長らが「違法な逮捕や長期勾留などで甚大な損害を受けた」と東京都と国に総額5億6,500万円の損害賠償を求める国賠訴訟を提起していたが、9月15日に結審した。判決は12月27日に言い渡される予定である。
番組は、6月30 日の東京地裁(桃崎剛裁判長)の国賠訴訟の法廷から始まる。そこで、捜査を担当した警視庁公安部の現職の捜査官が「まあ、捏造ですね」という発言をする。さらに、大川原社長が、勾留中に警察関係者から一通の匿名手紙を受け取ったことがはじめて明かされる。その内容は、捜査が捏造であることを内部告発するものであった。
番組は、「公安部の中でいったい何が起きていたのか」を、法廷の証言と独自資料をもとに徹底取材で検証するものである。冤罪原因の解明の大きな足がかりになる。
【参考文献】
・粟野仁雄「事件をねつ造した警視庁の巨悪──大川原化工機『不正輸出』冤罪事件」(上)、(下)(『狭山差別裁判』〔部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部発行〕537号・538号〔2023年〕)
・身体拘束の経過については、趙誠峰「大川原化工機事件・人質司法の記録」季刊刑事弁護116号(2023年10月発売)91頁に詳しい。
(2023年09月25日公開)