「第2回オンライン高校生模擬裁判交流戦」優勝校・神戸女学院高等学部と、「第3回オンライン高校生模擬裁判選手権」優勝校・中央大学杉並高等学校の2校による「高校生『文学模擬裁判』日本一決定戦 in Tokyo」1)が、3月19日に直接対決で行われた。
決定戦では、古典落語「河豚鍋」を主なモチーフにして作成されたシナリオに、参加校が検察側・弁護側それぞれの立場に立って立証・弁護活動を行った(大会の詳しい内容については、大会開催ニュースを参照)。
日本一決定戦を終えて、実行委員長の札埜和男・龍谷大学准教授は、大会準備や当日の戦いぶりについて次のように振り返った。
「7年前高校教員だった時に京都から生徒を引率して試合をした場所で、今度は自身が主催者側となり、高校生を招聘することに深い感慨を覚えながら準備に当たってきました。
お招きした両校は非常に対照的でした。3年生中心にチームワークが良く総合力を駆使した東の中大杉並、全員1年生で、一人ひとりの個性が光る奔放な西の神戸女学院。模擬裁判を敢えてスポーツ風に例えると、正統的でセオリーを大事にする手堅い中大杉並チームに、セオリーにとらわれず奇襲戦法を駆使して攻撃的に挑む神戸女学院、まさしく『がっぷり四つ』の試合でした。
資料の読解は甲乙つけ難く、被告人のなりきりぶりも両校共に優れていました。ただ、教材作成者としてびっくりしたのは、神戸女学院の発想の柔軟さです。流石、宇宙飛行士の後輩の生徒さんたちです。被告人が『被害者と一緒に、一口(河豚を)食べた』というストーリーには目から(河豚の)鱗でした。
また神戸女学院側の『異議出し』が非常に有効でした。決して相手のペースを乱すことを目的とするのではなく、出した『異議』がほぼ認められていたことからも、いかに的確だったかがわかります。中大杉並側は、異議対応に戸惑い、自分たちの尋(質)問をさせてもらえなかった所があったように思われます。ただ、ことばの使い方、話し方や伝え方の安定さは中大杉並に一日の長がありました。やはりそこは直木賞作家を先輩に持つ生徒さんたちです。
試合終了後の感想戦もお互いの心情が吐露され聴き応えのあることばが並びました。神戸女学院は1年生の時だけ模擬裁判をやってその後は離れる傾向があるとのことですが、ぜひ今回の成果を後輩たちに継承していってもらえたらと思います。法というワクワクする世界のあることを伝えてあげて下さい。中大杉並は3年生が中心だったので、最後、勝って終えたかった思いは痛いほど伝わりました。ただ「終わりよければ全て良し」とは限りません。人生は長いです。3年生の方が1年生の時、大会参加後に感謝の念を綴られた手記を読んで胸が熱くなったことを覚えています。きっと人間や社会への豊かな眼差しを持った素敵な大人になられることでしょう。
両チームの皆さんには、勝敗を越えて学ばれたことを熟成させていかれることを期待しています。
コロナに翻弄され続けた学校生活を過ごした生徒さんたちのために、かけがえのない対面の場を提供下さった(株)TKCの皆さまに、心より感謝申し上げます」。
注/用語解説 [ + ]
(2023年04月05日公開)