11月22日、NHKの逆転人生で、布川事件の櫻井昌司さんが登場


櫻井昌司さん

 11月22日(月)、NHKの番組『逆転人生』(午後10時〜10時45分)で、布川事件の櫻井昌司さんが登場する。

 櫻井昌司さんは、布川事件で再審無罪となった。再審無罪は、冤罪を訴えている者にとって、まさに受刑者(加害者)から一転して冤罪被害者 となる人生における大逆転で、「逆転人生」といえる。

 「身に覚えのない殺人の罪で、一度は無期懲役の判決を受けた男性。裁判のやり直しを求め、逮捕から43年越しで無罪を証明した。殺人えん罪の裏に秘められた人生ストーリー」と番組紹介されている。

 周知のとおり、布川事件は、1967年に茨城県の利根川沿いの町、布川(現、利根町)で起きた強盗殺人事件である。その犯人とされた櫻井昌司(当時、20歳)さんは、共犯者とされた杉山卓男さんとともに一審で受けた無期懲役が確定していた。その後二人は再審請求したが一度は棄却された。

 事件現場では38個もの遺留指紋が検出されたが、その中には二人の指紋がなかった。裁判の当初より、この「指紋不存在」が争点の一つとなっていた。素手で犯行をしたとする二人の自白と「指紋の不存在」が矛盾しているためである。

 第2次再審請求では、この「指紋の不存在」に関する新たな鑑定と現場状況写真の分析報告が提出された。これらの鑑定が再審開始決定(「逆転人生」)に貢献したことは、水戸地裁の再審開始決定を支持した東京高裁の決定からみると、間違いない。

 この鑑定を行なったのが栃木県警で29年間指紋鑑識にたずさわった齋藤保(株式会社齋藤鑑識証明研究所会長)氏である。この鑑定については、同著『弁護人のための指紋鑑定』の第3部「指紋鑑定の実際(ケース紹介)」第4章「布川事件(ケース4)──犯人指紋の不存在の状況証拠化の意義」で詳しく解説している。

 再審の扉を開くためには、必ずこのような新たな証拠の発見や証拠に関する見方の大転換がある。それを導くのは、冤罪を訴える本人の粘り強い努力と弁護士の熱い創意工夫であると思う。このNHK番組からもそのことを読み取ることができるだろう。

(な)

(2021年11月19日公開)


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