今年で第19回を迎えた季刊刑事弁護新人賞(主催:現代人文社、協賛:(株)TKC)の選考委員会が、10月4日に開かれ、全国から応募した15名の中から、次の3名がそれぞれ受賞した。受賞作品は、季刊刑事弁護109号(2022年1月20日発売)に掲載される。また、授賞式は、来年2月に東京で行われる予定である。
・最優秀賞: 下村悠介(第72期・第二東京弁護士会)窃盗被告事件
・優秀賞:志塚永(第72期・第一東京弁護士会)現住建造物等放火被疑事件
・優秀賞:田中晴登(第69期・大阪弁護士会)準強制わいせつ、出入国管理及び難民認定法違反被告事件
■季刊刑事弁護新人賞の沿革と概要
1997年4月、伯母(うば)治之・児玉晃一両弁護士が、詐欺被疑事件において接見妨害を行った検察官と違法な接見指定を看過して準抗告を棄却した裁判官の責任を追及すべく国家賠償訴訟を、東京地方裁判所に提起しました(詳しくは、児玉氏のレポート・季刊刑事弁護11号105頁参照)。この訴訟が新人賞創設のはじまりです。
この訴訟で、2000年12月25日、東京地方裁判所は、伯母弁護士に慰謝料として10万円の支払いを命じましたが、児玉弁護士の請求を棄却しました。続く控訴審では2002年3月27日、伯母弁護士に慰謝料を増額し25万円の支払いを命じましたが、児玉弁護士の請求はまたも棄却されました。これに対して、両弁護士は、児玉弁護士の請求は棄却されたものの判決内容は良くなったことなどの事情を考慮して、上告せず、判決が確定することになりました。
その後、弁護団と両弁護士は、賠償金25万と全国の弁護士からのカンパの残余金を、全国の新人弁護士の励みにして欲しいという願いから、新人賞の賞金として現代人文社に託しました。これを基金にして、2003年に「季刊刑事弁護新人賞」が創設されました。
毎年、刑事弁護活動レポートを募集し、10月に選考会委員会を開き、最優秀賞1名、優秀賞2名を決定し、レポートは、翌年の季刊刑事弁護に掲載されます。
なお、第10回(2012年)から(株)TKCが協賛している。
◎募集要項は、毎年、季刊刑事弁護の4月発売号に掲載。
◎応募資格:その年の9月末で、弁護士登録から5年以内。
◎評価の基準:
①事件の全体像を正確に把握している。
②弁護人の主張するケース・セオリー(あるいはアナザー・ストーリー)が明確に立てられ、そのケース・セオリーに説得力がある。
③捜査・公判段階において、刑事訴訟法の知識を利用した有効な弁護活動がなされている。
④捜査弁護・公判弁護を通じ、弁護人の「努力」の跡が見られ、「情熱」を感じることができる。
⑤独創性や工夫の跡が見られる。
⑥一定の成果が見られる。
⑦弁護活動が感銘を与え、新人弁護士をしてよい弁護人への動機づけとなるようなものである。
(2021年10月15日公開)