片山徒有さんら、少年法改正法案の問題点を浮き彫りする『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』を出版


出来たばかりの本をもつ片山徒有編集代表(2021年5月14日)

 少年法改正案は、衆議院の法務委員会で4月2日に審議入りし、参考人質疑と東京家庭裁判所の見学を含めて2週間14時間の審議時間で、慌ただしく進行し、自民・公明・立憲・国民の賛成多数で採択された。ついで4月20日、本会議で起立多数で可決され、参議院に送付された。現在は参議院法務委員会で審議が続いている(詳しくは、新倉修氏の連載「少年法改正国会を傍聴する」参照)。

 5月15日、元少年院長、元家裁調査官、元裁判官、弁護士らが編集した『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』が、現代人文社より、出版された。

 編集代表の片山徒有(被害者と司法を考える会代表)さんは、出版についてつぎのように語る。

 「現在、少年法改正案が国会(参議院)で審議中ですが、その審議にこの本が少しでも役立ってくれればと念じております。審議は、まったく先行き不透明となっておりますが、私たちとしましても出来るだけのことは行おうと決意を固めています」。

 本書の内容は、少年法研究者の論考、【Q&A】18・19歳非行少年の立直りと少年法、少年事件事例集、少年院出院者の座談会などからなっており、少年法改正の問題点を浮き彫りにする。

 国会審議では、少年法の理念や現在までの実務の実態、18・19歳を「特定少年」にして、厳罰化する必要性に関する議論が不足している。議論を深めるためには、18・19歳の非行少年の実情を検討する必要がある。本書第3部「少年事件事例集」は、18・19歳非行少年に対する家庭裁判所での調査・審理、少年院での立直りの実態を提供する。

 片山氏は、この第3部を監修した元家裁調査官の伊藤由紀夫氏について語る。

 「残念ですが、この本の完成をまたずに、5月6日に病気のため亡くなりました。わたくしたちの少年法反対運動の大きな支柱でしたし、この本の編集作業に全力投球していました。悔しい思いで一杯です。冥福を祈ります」。

 第4部「座談会/少年院出院者は語る 痛みを知る人こそ活躍できる社会に」では、4人の少年院出院者が、非行からどのように立ち直ったのか、いかに少年院での教育が立直りに有用であったかを語る。少年院出院者が一堂に会して、少年法改正問題について語り合うことは初めてだろう。

 少年院について「少年院で、信頼できる大人に出会った」、「更生が阻害されると、新たな被害者を生むおそれが高まる」とその教育的機能を高く評価。また、改正法の推知報道禁止の解禁については「更生のうえでは実名が出ていると何倍も大変」と不安を隠せない。さらに、刑罰を科せられると看護師など一定の職業につくことができないが、少年法は少年のときに犯した罪についてその資格制限を適用しないとしている。ところが、今回の改正ではそれを撤廃する。「それは少年たちの『夢や希望を狭める』と見直しを求める」と、発言している。

 片山氏は、「今後、この出版を機会に更に少年法改正反対に向けての活動を続けて参ります。勉強会やミーティングなどを全国各地で行う計画もありますので、今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます」と決意を新たにしている。

(2021年05月19日公開)


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