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「人質司法」を意識しない裁判官、できない裁判官(中)

森脇淳一(もりわき・じゅんいち)

「人質司法」を意識しない裁判官、できない裁判官(中)

「証拠隠滅のおそれ」と「逃亡のおそれ」をどう判断するのか

──話を元に戻すと、勾留裁判で勾留を認める一番大きい理由は、証拠隠滅のおそれと逃亡のおそれですか。

森脇 そうです。仕事がはっきりしないとか、扶養すべき家族がいないとか、重刑が予想される犯罪をしたとか、前科があるなど、そういう人は全部「3号」つまり逃亡のおそれでいけます。問題は、仕事も住所もある、家族関係もある、およそ逃げないような人は「2号」つまり証拠隠滅のおそれがあるかどうかです。それをどう判断するかは、簡単に言うと、否認していたら、あるいは自白していても、それを覆したら犯罪の立証が難しくなる場合は「2号」があることになります。

──そこが、外からみているとわからないんです。

森脇 やったという証拠が一応あるんです。あるのに否認しているということは、きっと関係者に働きかけたり、金を渡して買収して気持ちを変えさせるだろうと。つまりやったという証拠を隠滅するだろうと考えるのが裁判官として普通の考え方です。自白していても、社会に出たら、やはり刑罰を受けることをおそれて同じようなことをするだろう。それで「2号」を付けるわけです。

──証拠があるといっても、それは捜査側が一方的に集めたものではないですか。

森脇 それは、捜査官は何も悪いことをするはずがない、捜査官に対する信頼が前提ですね。

──捜査官に対する絶大な信頼が裁判官にありますね。

森脇 そこを疑いだしたら、「……

(2025年04月16日公開)


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