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2,000億企業の創業者が体験した「人質司法」

【後編】

山岸 忍(やまぎし・しのぶ)、中村和洋(なかむら・かずひろ)、西 愛礼(にし・よしゆき)、秋田真志(あきた・まさし)、亀石倫子(かめいし・みちこ)

2,000億企業の創業者が体験した「人質司法」

「人質司法」ついて語るプレサンス事件弁護団。向かって左から秋田真志弁護士、西愛礼弁護士、中村和洋弁護士(写真=2023年6月30日、龍谷大学大阪梅田キャンパス)

本動画は、ヒューマン・ライツ・ウォッチとイノセンス・プロジェクト・ジャパンの共催「刑事司法に関する共同キャンペーン/第1回シンポジウム 人質司法を考える」(2023年6月30日)を編集したものである(収録時間約11分)。

*著作権者・頒布権者の許諾なく、本作品の一部または全部の複製、改変、上映および送・配信することは、法律で固く禁じられています。但し、教育教材として非営利目的で使用する場合はこの限りではありません。

その人のキャラクターに合わせて、検事が決まる

亀石 山岸さんにはホステスみたいな検事が来て、寄り添うような形で検察に有利な供述を引き出そうとし、一方、共犯者には怒鳴りつけたり、脅迫したりというアプローチで供述を取ろうとしました。こういうふうに、その人その人のキャラクターに合わせて、検事のキャラクターも選んでいるのですか。

中村 そうだと思います。山岸さんは一代で上場企業をつくり上げた社長なので、怒鳴ったり、脅したりするよりは、むしろ、うまいことおだてて、調子に乗らせたほうが、ポロっとしゃべると思われたのでしょう。内偵段階で人間性や家族関係などかなり調べますし、そもそも逮捕する前には尾行もします。元会社のOBなんかからも会社の人間関係を聞くでしょう。これぐらい大きな事件になったら、相当準備をしていると思います。

亀石 そこまでするのですね。その人のキャラクターに合わせた検事が担当することになっているんですね。

中村 ピタっとくる人がいればの話です。

亀石 すごいですね。ですが、もし、その「ホステス検事」の取調べに弁護士が立ち会っていたら違っていましたか。

山岸 一番の共犯者とされる元部下や取引先の社長が、勾留されてからの取調べで弁護士の立会いがあったら、逮捕はなかったと、私は思っています。

 彼らも、在宅のときは脅しに屈していないんですが、逮捕、勾留されると、やっぱり不安になってしまいます。

亀石 外の世界と遮断されて、状況が一気に変わるという感じですか。弁護士の立会いの重要性をすごく感じましたか。

山岸 それが一番です。録音・録画なんてしていても骨抜きだと、私は思います。

亀石 何でですか。

山岸 裁判所がその録音・録画のDVDを証拠として採用しないからです。

亀石 あとで、元裁判官の西愛礼弁護士にも聞きますけど、そうなんですね。

山岸 はい。ですから、弁護団の先生方でそのDVDの文字起こしをしたんです。これは訴訟記録ですから弁護人以外閲覧することができず、業者に頼めません。弁護人の先生方がやらなければならないんですが、ものすごくお金と時間がかかります。だから、「普通はできない」と検事が思っているから、むちゃくちゃするんだと思います。

亀石 録画は何十時間では済まないです。取調べ全部の文字起こしをすることは大変です。文字起こしは1,400頁にもなっていました。どうせできないだろうと思っているわけですね。

山岸 きっとそうだと思います。

認められない保釈

亀石 弁護人の先生方に聞きたいんですけど、勾留されてから、結局、保釈されるまで8カ月かかりました。それまでに保釈請求が5回却下され、6回目でようやく許可が出ました。何でそんなに何度も何度も保釈請求して、認められなかったのかを教えてもらえますか。

(2023年12月28日公開)


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