漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第6回 金杉美和弁護士に聞く(4)

常に依頼者のために

一人の人間としてガチでぶつかる


 一件一件の弁護を大切に

 今後の目標とか、さらにやっていきたいことはありますか。

 私は刑事弁護の研修の講師もやっているので、若手の女性弁護士に「目標にしてます」みたいな形で声をかけてもらうことが、これまでも多かったです。

 でも、私自身は、格好いい弁護人になることに価値をあまり感じません。自分が格好いいとか、自分が主役ではなく、堂々としていてわかりやすいプレゼンをしたり、説得したりすることが依頼者の利益につながるのので、そこを磨いていきたいと思っています。

 私が一貫して言うのは、常に依頼者のためで、それは形として見えなくても、その人(依頼者)だけにわかってもらえればいいことです。

 だから、これからも私だからできた弁護、それは結果だけでなく、「この人とこういうつながりをつくれたのは私だからだな」と自分でも思えるし、できれば依頼者にもそう思ってもらえるような弁護を積み重ねていきたい、ただそれだけです。

 一隅を照らすというか、それをできるだけ飽きずに、ダレずに、常に事件の一件一件を大切にやっていくことをどこまで続けられるかだと思っています。

 人が結構好きなんだなというのが、金杉先生から伝わってきます。

 確かに、そうかもしれません。

 常に80〜90件を抱えながら仕事

 編集担当者と、「何かあったときに、どんな人に弁護してもらいたい?」というような話をすることがあります。そんなとき、私はやはり自分のことをちゃんと考えてくれるのが伝わってくる人が一番に来ます。

 そうですよね。ときには「こっちはあなたの事件だけやっているわけじゃないから」と思うこともありますが、それを言ってはいけないなと。弁護士が何十件と抱えながら仕事をしていること、多分、想像がつかないと思います。

 私は来たものを受けているだけですが、民事も合わせると80〜90件でしょうか、刑事の件数は多くありません。

 思ったより多いですね。

 この他に会務というか、弁護士会のことだったり、いくつかの団体の理事のことなど、ありとあらゆることがあるので、マルチタスクでないと回りません。

 そういう中で接見に行っても、すぐに頭を切り替えることができるんですか。

(2022年08月15日公開) 

インタビュイープロフィール
金杉美和

(かなすぎ・みわ)


2004年弁護士登録(京都弁護士会、57期)。京都法律事務所所属。大学時代は体育会航空部の活動に明け暮れた。2児の母。日弁連刑事弁護センター 委員、同法廷技術小委員会委員長(2018年)、京都弁護士会刑事委員会副委員長など、委員会活動にも精力的。東京法廷技術アカデミー(TATA)の講師を務める。2022年4月より京都弁護士会副会長。著書に『まだ気づいていないあなたと語る セキララ憲法』(新日本出版社、2015年)がある。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。現在は『クジャクのダンス、誰が見た?』「Kiss」(講談社)で連載中(2022年9月号〜)。


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