SBSの判決には腹が立つ
刑事裁判をやっていて良かったなと思う瞬間は、どんなときですか。
一番は、やはり依頼者からの感謝ですね。依頼者から見たら結果が一番切実だとは思いますが、先日、出所してきた人がわざわざ電話してくれて、事務所にも挨拶に来てくれました。その人にとって忘れられない弁護士というか、人生の中で出会った忘れられない人みたいな。何かを確実に感じてもらえたなと思うときは、やっていて良かったなと思います。
反対に、一番腹が立つはどんなときですか。
裁判官に対してでしょうか。腹の立つ事件はいっぱいありますが、一番と言われてパッと思い浮かぶのはSBS(乳幼児揺さぶられ症候群)です。乳幼児の揺さぶり事件で、控訴審まで無罪を争ったのですが、有罪判決が出たものです(『季刊刑事弁護』94号25〜27頁に詳しく書きましたので、こちらもご覧ください)。
20歳そこそこの若い被告人で、少年院に入った経験もありました。前科こそありませんが、そういう前歴があったので、「どうせ粗暴で、やってるんでしょう」みたいな偏見を持たれたんだと思います。
おそらく、被告人が子どもを肩車して倒れたことが原因だと、私は思っています。被告人は、子どもを守ろうと思って、支えたまま倒れたので顔面からいってしまいましたが、子どもは自分の頭の後ろにいたため、子どもはどこにもぶつけていないと思ったのでしょう。
とりあえず、子どもはベビーベッドに置きましたが、しばらくして気づいたら、子どもの様子がおかしかったという事件です。
すぐに親族に助けを求め、救急病院に行き、治療を受けましたが、医者から「何かしただろう。揺さぶっただろう」と通報されてしまいました。実際、揺さぶったという認定で大阪高裁で有罪になりましたが、事故だと思います。
私が腹を立てているのは一審の裁判官で、「そんなことぐらいでは、この傷害は生じない」と専門家も裁判官も言いますが、「大丈夫だったら、自分の子ども(生後6カ月の子ども)を肩車して、実際にこけてみたら?」と心の中で言い続けていました。
普通に考えても、170センチぐらいの高さから90度の回旋をしてバターンと倒れるわけですから、脳に相当なダメージが加わっています。他の協力医の先生も「これはアクシデントだね。つまり、事件じゃなくて事故」と言ってくれた人もいましたが、法廷に提出できず、そんなことで有罪になったときには一番腹が立ちました。
確かに、理不尽極まりないですね。
人間としてガチでぶつかる
弁護の途中で「この人の弁護したくないな」と思う人はいますか。
基本的に最後までやりますけど、一審をやって、控訴審はもうやりたくないと思うことはあります。
その人の問題やその事件とかではなく、
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(2022年08月01日公開)