少年と信頼関係をつくる雑談
少年事件で、一番苦労したケースって何ですか。
どれも結構大変なんで、一番って言われてもむずかしいですね。
たとえば、重大事件をやったときに、不遇感を抱えていた少年だったのですが、2年近く、その少年に週に1回ぐらいのペースで、ひたすら会っていたんです。何の用がなくても。
雑談しにいくみたいな感じですか。
そうですね。
少年への面会って、1回何分までとか、毎回時間が決まっているんですか。
いえ、特に決まってないですね。基本的に少年の場合でも、弁護人や付添人は権利を守るためにいるので、時間は無制限です。
私は行くと毎回、小一時間ぐらい話し込んできますね。最後の方には、「仕事大変だと思うけどがんばってね」とか、「風邪ひかないでね」とか、私を心配するような発言もしてくれるようになって、人のことを思いやれる、本来の優しさが出てきたんだな、と感慨深く思ったことを覚えています。
石野先生が担当した少年で、社会復帰した方も結構いらっしゃるんですか。
今、元気にやっていることがわかっている少年は何人もいます。少年院を出て「何も悪いことをしていない」っていう少年もいれば、残念ながら「他の件でまた捕まって、結局少年院へ行った」っていう少年もいます。
あと「今度は犯罪に巻き込まれて、被害者になってしまい、暴行を振るわれて、ケガをしたから、何とかできませんか」みたいな形で連絡をもらったこともあります。
そんなケースもあるんですね。
親御さんが私に、「今回、この子、手を出さなかったんですよ、先生」って。「ケガさせられちゃって、ネックレスを引きちぎられたらしいんですけど、多少賠償してもらえたりするんですか」と連絡してきました。
大きな目で見たら、殴らなかったっていう点で、一歩前進ですね。
そうなんです! 「元」少年が「今回はぐっとこらえました、超腹立ったんすけどね」って言うのを聞いて、「えー、殴らなかったんだ、偉かったじゃん」みたいな話をしたりしました。
少年から話を聞くときに気をつけていること
少年から話を聞くうえで、気をつけていることはありますか。
上から目線にならないように気をつけています。少年は少年で歳は下なんですけど、一個人なので、人格にできるだけ配慮したような接し方ができたらいいなと思っています。
自分も親ぐらいの年齢になってきているので、少年の話を聞きながら、「えっ!? ダメじゃん」「それって、あなたが悪いよね」みたいなことを言いたくなるんですけど、まずは本人の見え方を、言い分を聞いてあげたいと思っています。価値観の押し付けにならないように。人から言われたことなんて、聞くのに限界があると思うので。
結果的に「この程度、反省してくれたらいいな」とか、「この程度、この事件に向き合ってくれたらいいな」っていうゴールは、確かにあります。だけど、
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(2021年11月05日公開)