漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第4回 髙橋宗吾弁護士に聞く(2)

先輩から受け継ぎ、若手が変えていく刑事弁護

地域や世代の差を無くし、いろいろな人を巻き込む


妻が刺されて死んだら、その加害者を弁護しますか?

 最初から、刑事弁護をすることについての悩みはなかったんですか。

 インターンは楽しかったですけど、厳しい判決の場面も見ていましたし、簡単な仕事でないことはわかっていました。だから、仕事を始めるにあたって、どこかで何らかの悩みにぶつかるだろうとは思っていました。

 ただ、最初から見ていた弁護士たちがそういう悩みを表に出すタイプではなかったので、あまり不安感を持たずにこの世界に入ってきたほうだとは思います。

 実際に自分で事件を担当するようになって、依頼者と話していく中でも、まったくその人の話が理解できない、自分とは別の世界の人だと思うような依頼者はこれまでまったくと言っていいほどいません。

 どんな事件で接する依頼者にも、それなりの理由や言い分があると思えるので、幸い、そこに対しては悩みがありません。

 そういう依頼者に頼られているのに、結果がなかなか出せないということへの悩みは深いですが……。

 こんなことを話すと、家族からは「サイコパス的なところがある」なんて言われたりもしています。

 サイコパスと言われるんですか。

 冗談半分ですが、妻から言われることがたまにあります。

 それはどういったところで?

 妻からは「私が仮に刺されて死んだら、その人の弁護をするか、しないか」みたいなことを聞かれて……。

 究極の問いですね。

 「確かに。それは、そこに立ってみないとどうしようもなくわからないけれど、コンフリクトを考えなくてよくて、国選で回ってきたらやるかもね」みたいなことを言ったら、どん引きされました。

 あとは、「自分が誰かに刺されたけど死んでいない」みたいなときに、ある程度事件の真相を自分はわかっている。その上で、それがどういうふうに証拠・裁判に表れてくるのか。変な話だけど、そういうことを妄想したりもします。

 ご自身が被害者という立場で。

 そのときに限っては、自分が真実を知っているわけです。自分が弁護人として参加するかは別として、真実と刑事裁判の結果がどのように変わってくるのかはかなり興味のあるところです。

 刺されているのに?

(2021年08月30日公開) 

インタビュイープロフィール
髙橋宗吾

(たかはし・そうご)


1989年、埼玉県生まれ。早稲田リーガルコモンズ法律事務所京都オフィス代表。K-Ben Next Gen運営メンバー。日弁連刑事弁護センター事務局次長。京都弁護士会刑事委員会委員。共著書として、『情状弁護アドバンス』(現代人文社、2019年)など。刑事事件の他、中小企業の顧問業務・寺院法務・エンタメ法務にも取り組む。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


こちらの記事もおすすめ