漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第1回 坂根真也弁護士に聞く

天職としての刑事弁護

常に弱者の立場に立てる


「なぜ悪い人を弁護するんだ」

 坂根さんは、刑事弁護に特化した法律事務所を創設しました。どんな方か興味津津でやってきました。そこで、日頃、刑事弁護や弁護士について疑問に思っていることをお聞きしたいと思います。一般の人から「こんなに悪いことをした人を、何で弁護するんだ」と聞かれたら、どうお答えしますか。

 ある人が悪いことをした、あるいはそれを疑われている場合、社会がみんなしてその人を責めることになります。そうすると、多数が少数を責める構造にどうしてもなってしまいます。まして、警察つまり国家権力は早く犯人を逮捕して治安を維持したいという欲求が高いですから、そういう傾向に陥りがちです。

 「悪いことをしたんだから、少しぐらい不利益を被ってもいいじゃないか」というのが一般の人の素朴な感情です。そこに、冤罪(えんざい)が生まれる素地があります。あるいは、やったこと以上の責任をその人が問われることになってしまいます。それを防ぐ役割の一翼を担っているのが弁護人です。

刑事弁護の道へのきっかけ

 刑事弁護をやろうと思ったきっかけには、何かあったのですか。

 私にとっては刑事弁護は天職すぎて、最初にどういうふうに目指したのかも忘れました。1980年代に免田事件など死刑再審4事件という著名な冤罪事件があって、それを学生時代に知ったときにとても大きな衝撃を受けたのが、最初のきっかけだったように記憶しています。

 学生のときに、何か活動をされていたのですか。

 特に、何かをしていたわけではないのですが、弁護士を目指して、勉強中にそういう本を読んではいました。

 では、最初に弁護士になろうと思ったのは、法学部に入学されたからでしょうか。

(2021年02月22日公開) 

インタビュイープロフィール
坂根真也

(さかね・しんや)


弁護士。東京弁護士会所属。2002年、司法試験合格(第57期司法修習)、2003年、上智大学卒業。2004年、弁護士登録(北千住パブリック法律事務所)。2008年、東京ディフェンダー法律事務所設立。第3回季刊刑事弁護新人賞で優秀賞を受賞(2006年)。主な著作に、『刑事弁護ビギナーズ(第1版)』(共著、現代人文社、2008年)、『新版 刑事弁護』(共著、現代人文社、2009年)、『裁判員裁判における弁護活動──その思想と戦略』(共著、日本評論社、2009年)、『実務体系 現代の刑事弁護 第2巻』(共著、第一法規、)2013年)などがある。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


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