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第4回山田恵太弁護士に聞く

障がいをもつ人の弁護をめざす

刑確定後の社会復帰も見据えて

アリエ法律事務所にて、2020年3月13日


11 東京TSネットの活動

——東京TSネットにも力を入れていると聞いていますが、TSネットはどんな活動をしているのですか。

山田 東京TSネットは、私が弁護士になったタイミングで立ち上がった団体で、障がいのある人で被疑者・被告人となってしまった人の福祉的な支援をしていくことを目的としています。

 ソーシャルワーカーの人たちに、被疑者・被告人に面会して、更生支援計画と言われる、その人たちが福祉的な支援だけではなく、どんな支援とか、周りの人に支えられながら生きていくのかということをまとめた計画を作ってもらいます。それを裁判の場で証言してもらい、証拠として出していく活動をしています。これがメインの活動です。東京TSネットも8年目、一般社団法人になってから5年目ですが、本当にいろんな人に支えられながら、続けられています。

 その他セミナーや出前講座という形で、福祉事業所などで、刑事事件に関連するテーマや、障害者虐待防止法、障害者差別解消法などに関する講演などをやっていました。また、昨年ぐらいから、自分たちが関わった当事者の人たちの居場所というか、よりどころにもなれるような場所を社会の中に作りたいということで、バーベキューや鍋パーティをやったりしています。そこでは本当にフラットな関係でわいわい言いながら、一緒にバーベキューをしたりする。それはすごく楽しかったし、そういう会を続けていきたいなと思っています。

 弁護士はどうしても事件だけの関わりだけになってしまいがちですが、特にソーシャルワーカーとの関わりはピンポイントだけで終わるものでは本来ありません。そういったものを少し包括、包摂できるような居場所つくりも、TSでやっていけたらなと思っています。

12 今後の展望 

——今は障がいのある人の関係の事件、あるいは弁護をされていますが、今後、どういうところに発展させていきたいか、展望みたいなものがあれば教えてください。

山田 私は、先ほどもお話しましたが、もともと刑事弁護だけを考えてなかったこともあり、刑事事件は、今後もこのまま続けたいと思っている一方で、たとえば刑務所に行った人の社会復帰の手助けや、出所後の雇用問題等に関する支援のような活動もしていきたいと思っています。

 弁護士として法律のことだけ考えてしまうと、どうしても頭打ちになってしまう部分もあるし、刑事弁護は突き詰めていくと、法解釈の話になっていくと思います。それはすごく大事だけれど、私はそれが得意なわけでもないし、何もできることはないと思っています。そこは研究者の方たちや、多くの経験を積まれた実務家の方々がいるので、論文を読ませてもらったりすることによって勉強していったほうがいいなと思っています。

 自分ができることは、もう少し、目の前にいる人の生活全体を考えたりすることなのかなと。これはもちろん、刑事弁護という枠で考えれば、そこからはみ出した部分だと思いますが、それに関わっていく弁護士がいてもいいのではないかと思っています。

 来年度からは、大学院に入って心理学を勉強し直して、あらためて障がいのある人のことについて、さらに深めていけたらいいなと考えているところです。

——弁護士は、判決が出てしまえば仕事としてはおしまいで、刑確定後の被告人の更生や社会復帰について、あまり関心がないような気がします。もう少し判決のあとまで関わってくれるといいなと思います。

山田 そうですね。「それは弁護士の仕事じゃない」と言われる先生方もいて、それはそれで納得する部分もあるのですが、弁護士の仕事かどうかは別として、その点について私は感心があるし、関わりたいなと思っています。そういう人がちょっとずつ増えていかないと、刑事政策的には意味がないと思うし、情状弁護は、刑確定者を刑務所に預けてそれで終わりでいいのか、社会復帰について、全部国任せでいいのかと疑問に思ってしまうんです。

 今、愛知県や兵庫県で、受刑者に面会に行ったり、それに財政的支援がつくような「寄り添い弁護士制度」が始まっています。そういったことも含め、罪を犯してしまったことで社会から排除されがちな人たちへの支援に、もうちょっと弁護士が関わってもいいと思います。刑務所では、福祉支援者の人の面会が認められなかったりするんです。たとえば更生支援計画を作った人などが面会に行っても会えないことがあります。それ自体問題ですが、元の弁護人が行って駄目と言われることはないので、せっかくそういう立場があるなら、社会復帰に向けてできることはいろいろ考えられるのではないか。

 また、私たちは、障がいのある人に、その障がい特性に配慮した裁判をしろとか、裁判所ではすごく言うのですが、受刑中は配慮しなくていいのかと疑問をもちます。障がいのある人は、裁判の場よりも、ずっと生活として続いている処遇場面でもきちんと配慮してくれというニーズのほうが高いわけです。拘禁問題の分野でたいへん頑張っている先生方もたくさんいるので、そういう方たちとも連携しながら、刑事弁護から社会復帰・再犯防止という一連の流れとして見ていくことができたら、刑事弁護の奥行きはもっと深まっていくのではないかと思っています。

——ありがとうございました。

(2020年06月08日公開) 


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