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第3回南川学弁護士に聞く

刑事司法のあり方を常に模索する

法曹三者のバランスと刑事弁護

千葉・船橋市にあるPAC法律事務所にて、2019年6月20日


10 難しい事件とは

──今、すごく難しい事件とかありますか。殺人などは難しいのでしょうが、自分としては、こういう事件はちょっと苦手という事件はありますか。

南川 いわゆる情状事件と言われているものは難しいと個人的に感じています。本人なりには言い分があって、犯罪をやってしまった。だけど一般人から見たら、単なる言い訳に過ぎないと捉えられるようなときに、どうするかはなかなか難しいです。

 過去に担当したものに、児童虐待(ネグレクト)して、結局、自分の子どもを死なせてしまったという事件があります。もともと子どもに病気があり、手当が不十分だったため亡くなった。そのお母さんを担当したのですが、母親として、毎日、子どもの面倒を見ていたら、具合が悪くなれば、普通「病院に連れていけばいいじゃないか」と思うのではないでしょうか。

 でも、「病院に連れていけなかったのは、旦那さんからDV的なものを受けていて、旦那さんに意見を言えなかった。旦那さんに『病院なんか、連れていかないほうがいい』と言われ、連れていけなかった」と本人が言っていました。

 それもわからなくはないんですが、「自分の子なんだから、弱ったら、旦那さんの言うことは聞かず、病院に連れていけ」と、考える人が多いだろうし、私自身もそう思ってしまう部分もあります。本人の主張をただ伝えるだけでは足りない。こういう場合は、どう裁判官、裁判員に理由を納得してもらえるかは難しいところです。

司法研修所(和光市)
司法研修所(和光市)

11 刑事弁護教官としての抱負

──最後に、今年4月から司法研修所の刑事弁護教官になりましたが、どんなことをしていきたいですか。

南川 神山先生が研修所の刑事弁護教官に入られてから、ここ数年で刑事弁護教育の方法もだいぶ変わり、今の時代に適した刑事弁護をきちんと教えていくようになりました。それら先輩たちの成果を引き継いで、私も刑事弁護のスピリットやスキルをしっかり伝えていけるようになりたいと思っています。

 まずは、原理・原則や物の考え方をきちんと教えていく。それが、修習生がその後にどの立場となったとしても、実務家として活躍するためのベースになると考えています。

(2019年09月24日公開) 


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