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第3回

大江千束さん・小川葉子さんカップルと同性婚訴訟のストーリー

25年を経た今踏み出す、同性カップルの大きな挑戦


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同性婚訴訟/「こういう訴訟が起こるのが当たり前という国に」(小川さん)/2019年

 「それに、そもそも選択すらできないということが問題ですから」と、今度は小川さんが続ける。「私たちはスタートラインにも立てません」

 2月14日、同性のカップルに婚姻が認められないのは法の下の平等に反するとして、国に対し同性婚を求める訴訟が、日本で初めて提起される。ふたりも原告になる。

 この訴訟は、弁護団によって、「結婚の自由をすべての人に」訴訟と名付けられている。婚姻をする自由、しない自由の両方が、法律上の性別が違うカップルであっても、同じカップルであっても、認められるようになって欲しいということで名付けられた。

 東京だけでなく、札幌、名古屋、大阪の裁判所でも提訴され、全国で13カップルが原告となる。

 初めての訴訟に当初は及び腰だったというふたり。しかし、「自分たちが権利を主張しないと何も変わらない」と決断した。

 「25年前でも、もし同性婚訴訟が起これば参加したかもしれない。でも今やっと日本も、こういう訴訟が起こるのも当たり前という国になってきて、私たちも中高年になった。これが最後のチャンスだと思っています」と話す小川さん。

 「生きている間に同性婚が認められて法律が出来るかどうかは分からない。負けるという人もいます。でも世の中のことはわからない。負けるかもしれないけれども、私たちが声を上げることで、あとに続く人たちが必ず出てくる。後につながればいいって思うんです」

 アメリカで最初に同性婚を求める訴訟が起こされたのは1971年。連邦最高裁が「同性婚の禁止は憲法違反」とする判決を出したのはそれから時代が下って2015年6月のことだった。

25年後の未来(大江さん)/2040年代

 小川さんが話し終わるのを待って、大江さんが口を開く。

 「私たち、レズビアンだからといって後ろ指をさされないようにと思って、今までずっと、人一倍がんばってきた。レズビアンを代表しているわけでもないんですけど」

 「今でも小川さんは地域での活動を精力的に行っているんですけど、雪が降ったら隣の家も雪かきしたり、誰に言われたわけでもないのに、周りの人に認めてもらうためにがんばっちゃうんです」

 「でも、正直疲れたよね、と最近は思う。私たちも歳をとって、若いころみたいにもうそんなに頑張りたくないという気持ちがあります」

 「私もLGBTQ関係の活動が忙しくてプライベートの時間をなかなか取れず、そろそろ活動に使う時間も少なくしていこうと思っていたところでした。そこに、同性婚訴訟を起こすという話が来て。今回、自分のかかわることとして最後に打って出ようと、決めたんです」

 「私がこの訴訟に関して言いたいことはひとつ。『司法がどう判断するか、見てみたい』これに尽きます。時間はかかるけれど、今、時代は着実に動いている。このうねりを途切れさせないようにしなければいけない。もう少し健康でいて、この先々の激動の時代を、見守っていきたい、そう思います」

 大江さんが最後に語ったのは25年後の未来の風景だった。

 「街角で、久しぶりに会う若い男女の友人がしゃべっている。『俺、こないだ結婚したんだ』という男の子に、『おめでとう! 誰と結婚したの? 男の人? 女の人?』と女の子」

 「男の子が、『男だよ! それより知ってる? 結婚するときに知ったんだけどさ、この国では、昔は同性同士の結婚は禁止されてたんだってよ』というと、『うそでしょ? そんな野蛮な国だったの?!』と女の子はびっくりするんです」

 「これがもう未来の話じゃないところもある。オランダでは、25歳以下の若者の中には、同性婚が禁止されていた時代があったことすら知らない人たちも多くいると、オランダの国会議員に聞きました。日本でも、同性婚が当たり前になる日がきっと来ます」

(2021年04月09日) CALL4より転載

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