リレー連載 刑事弁護の最前線──各地の弁護士会の動き<br>第2回 長崎県弁護士会

リレー連載 刑事弁護の最前線──各地の弁護士会の動き
第2回 長崎県弁護士会

長崎拘置所の突然の廃止・収容業務停止と刑事弁護

黒岩英一 弁護士


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1. 長崎県弁護士会の状況

 長崎県弁護士会の弁護士数は2025年1月1日現在で158名、国選事件の件数は、被疑者国選は1年に469件(2022年までの過去4年平均)、被告人国選は343件(同条件。被疑者国選からの継続を含む)となっている。なお、被告人国選のうち本庁の事件は265件であった。

 長崎県弁護士会では、刑事当番への登録の減少が大きな問題となっているところ、その中でさらに追い打ちをかけるように拘置所の問題が浮上したため、今回、これについて言及をさせていただきたいと考え、執筆に至った。

2. 長崎県弁護士会における拘置支所の位置関係等

 おそらく多くの地域で同じように考えられているが、拘置所問題は位置関係が重要であるから、前提知識として、長崎県の各施設の位置関係を紹介する。

 長崎拘置支所は、2023年11月23日に収容停止となるまでは、長崎市内に設置されていた。長崎地裁本庁からの距離は約5.4キロメートルで、自動車で20分程度、公共交通機関を利用しても35分程度の距離である。

 現在、被収容者は長崎刑務所内に収容されており、長崎刑務所は長崎市ではなく諫早市に設置されていて、本庁からの距離は約28.7キロメートル、自動車で高速道路を経由しても片道30分以上はかかる。公共交通機関を利用するとなると、1時間30分以上はかかる位置関係にある。

3. 拘置所問題に関する経過

 2023年2月6日、長崎刑務所から長崎県弁護士会への通知がおこなわれ、長崎拘置支所における収容停止の通知を受けた。

 長崎県弁護士会に対する事前協議は何もない突然の連絡であったが、拘置支所の収容停止は、弁護士にとって被疑者・被告人との接見のための移動に要する負担が相当大きくなるものであったことから、刑事弁護活動にも大きな影響を与えるものであった。

 長崎県弁護士会としては、関係各機関との協議や国会議員への要請、シンポジウムの開催による気運醸成のための活動などを積極的におこない、日弁連などから意見書を発出してもらった。しかし、2023年11月23日、刑務所は弁護人にも知らせず被収容者を長崎拘置支所から長崎刑務所へ移送し、拘置支所収容停止は予定通りおこなわれることとなった。これに対して、11月28日に、長崎県弁護士会は「長崎拘置支所の収容業務停止に対し強く抗議するとともに建て替えにより収容業務の再開を求める」会長談話を発した。

 詳細な経過については、以下の表を参考にされたい。

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(2025年01月28日公開)


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