──TATA創立から10年が経ち、研修を受けて、多くの人が巣立っていったと思います。TATAの成果を実感として、どう考えていますか。
高野 10年間で、数百人の卒業生がいると思います。その人たちが、東京・大阪だけでなく、地方でも成果を出しているので、今後も日本の刑事裁判、特に裁判員裁判をより良いものにしていく原動力にはなりうるだろうと思っています。ただ限界もいくつかあるようには思います。
──それは、どういうところですか。
高野 例えば、裁判員裁判の法廷でわれわれが冒頭陳述を口頭でしたとします。その後に、最近の裁判官は「書面は?」と聞いてきます。最初の頃は「書面は?」と言わなかったと思いますが、最近は平気でそう聞いてきます。
結局、口頭で述べた冒頭陳述を聞いてその場で理解するのではなく、あとで書面を読んで理解することになります。書面を参考に事実認定をしていく方向に、どうしても流れていってしまいます。
──由々しき問題ですね。
高野 最終弁論も同じです。最終弁論で、われわれはパワーポイントを使って口頭で話をします。最終弁論が終わると、裁判長が「書面は出していただけますか」などと言ってきます。こうした発言を聞くと、裁判官は結局私の話を聞いてないんだなと感じます。
さらに、開廷期日にも問題があります。裁判員裁判開始当初は、連日開廷していました。週に1日だけ休みがあって、4日開廷するということは私自身も平気でやっていましたし、時には5日間連続でやることもありました。
それが……
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(2024年07月12日公開)