困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第6回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第6回

指紋が付きやすいモノ、付きにくいモノ

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


 みなさま、こんにちは! 齋藤鑑識証明研究所の齋藤健吾です。

 毎回、コラムを書くために指紋に関するテーマを決めて書いてきました。何とかみなさまが気になっていることをテーマにして、興味を持たれる文章を作成したいと考えています。今回のテーマは指紋が付きやすいモノ、付きにくいモノです。

 指紋が残ると言っても、触ったもの全てに残るわけではありません。触ったけれども指紋が残らないモノもあれば、少し触っただけでも残りやすいモノがあります。その違いは何か? などを詳しく紹介していきます。

1 指紋が残るとは、指紋分泌物が付着すること

 一般的に「指紋が残る」と言いますが、指紋鑑定的な表現で言いますと「指紋分泌物が付着している」となります。指紋分泌物とは、いわゆる指の表面にある汗(湿り気)を指しています。モノに指が触った時に指紋分泌物が付着し、そこに指紋検出の薬品を使うと指紋が現れます。

 私が依頼人に指紋が残りやすいかどうかを説明する際は、ハンコに例えます。指の表面にある指紋の凹凸が印面(ハンコの文字が彫刻されている面)、指紋分泌物が朱肉です。ハンコだけあっても朱肉がなければ捺印されません。つまり、指がカサカサしている状態(スーパーのビニール袋が空けられない状態)ですと朱肉が付いていないハンコと同じなので、当然指紋は残りません。

2 モノの表面の状態が重要

 指紋がモノに付着する時は表面に凹凸があるかないかがかなり重要になります。もし、大根おろしのように凹凸があるところに、ハンコを押したらどうなるでしょうか? 凹凸が邪魔して接触面積が少ないので、文字が読めません。指紋も全く同じで凹凸があると指紋の線が確認できないので、鑑定に使える指紋ではありません。また、布類も同じことが言えます。布類は糸が格子状に集まった集合体なので、どうしても表面に凹凸ができてしまい、指紋が鮮明に付着しません。

3 犯人特定の作戦

 では、どういったモノに指紋が付きやすいのでしょうか?

(2024年03月05日公開)


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