みなさま、こんにちは! 齋藤鑑識証明研究所の齋藤健吾です。
このコラムで指紋鑑定の知識を提供したく、毎回テーマを決めて書いてきました。今回は、指紋が付着した時期をどうやって特定しているのかをテーマに書いていきたいと思います。
実は指紋鑑定において、いつ指紋が物件に付着したのかは永遠の課題であり、科学が進んだ現在においてもピッタリと日時を特定することができません。また、死亡推定時刻のようにおおよそ何時間というような予想もできません。
では、どのようにして指紋が付着した時期を特定しているのかを今回も事例を通して紹介してまいります。
1 事案の発生
小学生の娘を持つ母親の山下恵子さん(仮名)は、夕方、娘さんの帰りを待っていました。程なくして、娘さんが帰ってきましたが、ひどく落ち込んでいる様子でした。「どうしたの?」と山下さんが訪ねると、娘さんは自分の交換日記を差し出し、中身を見せると、数ページにわたり、ビリビリに破かれていました。
それを見た母親はショックを受けて、娘さんに「誰がこんな事をやったの!?」と問いました。すると、娘さんは意外にも、いつも仲良くしていた友達の名前を言いました。詳しく聞くと、以前は仲が良かったのですが、何となく気が合わなくなり、自然と遊ばなくなって、その後、その友達から嫌がらせを受けるようになったと話してくれました。 また、問題の交換日記は、その友達と仲が良かった頃に使っていたノートだそうです。
2 学校へ問い合わせ
早速、山下さんは学校へ出向き、嫌がらせをされた交換日記を見せて、破いた子に指導して欲しいと頼みました。しかし、学校の対応は交換日記を破いた生徒を特定する証拠がないと個人的な指導はできない、と言われてしまいました。
山下さんはひどくショックを受けて家に帰り、この事を旦那さんに伝えると、強い憤りをあらわにしました。絶対に交換日記を破いた証拠を見つけ出すと堅く決意し、夫婦で証明方法を模索しました。
こうして、インターネットで証明方法を探しているときに弊社のホームページを見て、指紋鑑定を使って証明したいと考えました。
3 指紋鑑定の流れ
山下さんから指紋鑑定のご依頼をいただき、鑑定の進め方を考えていました。今回の鑑定の目的は、交換日記を破いた人がその友達であるかどうかを特定することです。これを明らかにするために、交換日記に友達の指紋が付いているかどうかを確認しますが、ここで一つ問題があります。
破られた交換日記は、友達と仲が良かった頃に使っていたので、当然、その友達の指紋が付いています。そのため、破られた交換日記から友達の指紋が検出されても、その指紋が通常使用時の指紋か、破いた時の指紋かを判別できなくては、事実の特定ができません。そのような場合は、検出された指紋の部位、指紋の向き、指紋が付いている位置などから、どのような動きの時に指紋が付着したかを検証します。
まとめると、今回の指紋は以下のような流れとなります。
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(2023年12月13日公開)