連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第20回

公判期日当日の書記官事務

中村圭一 元裁判所書記官


 「書記官は、公判期日は何をしているのだろう? ただ座っているだけかな」とお思いの弁護人もいらっしゃると思いますので、公判期日当日にどのような動きをしているのかについて、今回はお話したいと思います。

 まず、書記官は開廷の10分前には法廷へ行くのが通常だと思います。法廷の開錠をしたり、マイクのテストをしたり、録音の準備をしたりしますが、裁判員裁判の場合は、その他の機器の準備も大変なので、とても10分では足りない状態になります。

 証人等がいる場合は、「宣誓書」や「出廷カード」を事前に書いてもらったり、場合によっては、「日当旅費請求書」にも事前に記入してもらったりしますので、証人等が複数人いる場合は、意外と時間がかかったりします。その他、細かいことを言えば、当日検察官が提出予定の「証拠等関係カード」を事前に受け取り、弁護人にも事前に渡しておいたりしますし、私の場合、時間に余裕があれば、誤字等がないかざっと目を通し、特に補強証拠に漏れがないかをチェックしたりもしていました。ちなみに、どれも簡単な作業に見えるかもしれませんが、一つでも忘れていると、結構大変なことになったりします。例えば、法廷の傍聴人入口の扉の開錠を忘れたとしたら、公開の法廷ではなかったという疑いが生じてしまうことになってしまいます。

 開廷中は、書記官として、どのように手続が進んでいるか、手控えをとりながら確認する必要があります。刑事事件の場合は、どの順番に証拠の取調べをしたかの記載も必要ですので、割と注意を払う点が多いです。尋問中、録音反訳を利用する場合は、録音反訳業者のために作成する「録音反訳メモ」を作成していることも多いです。録音反訳業者が……

(2023年12月05日公開)


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