連載 刑事司法における IT 利用の光と陰

刑事司法におけるIT利用の光と陰
第13回

路上から上空へ——ドローン撮影から衛星撮影まで

指宿信 成城大学教授


1 はじめに

 2021年10月23日、北海道新聞は、密猟する様子を道漁業取締船がドローン撮影した映像を使って北海道警が密猟者を漁業法違反で摘発したことを伝えています。これは自治体がドローンを利用して継続的に空中から監視していた映像を警察が証拠に利用したものでした。

「北海道新聞」2021(令和3) 年10月23日紙面より(北海道新聞社許諾D2305-2308-00026570)

 これまで日本の裁判例においてドローンから撮影された写真が証拠として提出され、その証拠能力が法廷で争われた例は見当たりません。捜査機関によって撮影された映像の証拠能力については、デモ隊の道路使用許可違反行為時の撮影(1969年)に始まり、速度違反自動取締り装置の撮影(1986年)、路上や店舗内での動画撮影(2008年)に関する一連の最高裁判例がありましたが、上空から撮影した映像利用については、最高裁判例はもちろん下級審の裁判例もないようです。

 さて、日本語の「監視」に当たる英語の“surveillance”という語については、上という意味の“sur”と、ラテン語の見張るという意味の“vigilare”から派生した“veiller”とを掛け合わせた言葉に由来しているとされて……

(2023年06月28日公開)


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