漫画家・浅見理都が刑事弁護人に聞くザイヤのオオカミ

第5回 石野百合子弁護士に聞く(4)

「法律家の枠をこえる」弁護士の仕事

非行を犯した少年が、自分と向き合えるように寄り添う


マニアックなファンも納得する『イチケイのカラス』

 『イチケイのカラス』、めっちゃ面白かったです。

 ありがとうございます。

 今さら言うなっていう話ですけど、すごい綿密に取材されていて、こんなに正確な刑事裁判の漫画があるんだと思ってビックリしました。

 櫻井(光政)先生が、「このケースだったら、こういう対処をする」と細かく教えてくださったので、監修の先生方のおかげっていうのはあります。

 一人ひとりの登場人物が、「あっ、いるいる! こういう検察官っている!」って。残念なキャラ設定だけど「そういう人いる!」みたいなことが多かったです。

 ダメな弁護士とか。

 本当にそうですよ。代表して「なんかすみません」って謝りたくなるような……。

 描いてる方としては、ダメな方が面白かったりするんですけどね。

 そうかもしれませんね。あと、判決文がすごい小さな字で、全文載ってるのがすごく面白かったです。

 あれを全部読んでくれる人っているのかなって疑問だったんですけど、あの判決文を全部読んでくださった方、結構いるんですよ。

 マニアックな見方であるのは事実かもしれないですね。ただ、全部載ってるから伝わる部分はありますよね。全部入れるの、大変じゃなかったですか。なんで全部入れることにしたんですか。

 監修の片田(真志)先生が、「このケースでは、判決文、こういうふうに書きます」というメールくださったんです。

 そのメールを編集担当者も読んでいて、これは文量的にもそんなに長くないし、もしかしたら載せられるんじゃないか。そう思って、文字ばかりになるんですけど、思い切って見開きで全部載せようということになりました。

 でも、やっぱり賛否はありますね。「これは漫画じゃない」みたいなことを聞きましたし。確かに、文字だけですから。

 でも、プロの方たちには好評で、嬉しかったです。

 私が見てすごいなと思って感動したので、弁護士じゃない友達にも、たくさん紹介しましたよ。

 ありがとうございます。結構、留置場にいる人からはがきをもらったりして、留置場って「モーニング」読めるんだって、ビックリしました。

 意外と、読めるんですよ。

(2021年11月19日公開) 

インタビュイープロフィール
石野百合子

(いしの・ゆりこ)


埼玉県生まれ、神奈川県育ち。東京大学経済学部経営学科卒業。都市銀行勤務後、早稲田大学大学院法務研究科修了、平成23年弁護士登録。新百合ヶ丘総合法律事務所共同代表。日弁連子どもの権利委員会幹事。『少年事件ビギナーズ ver.2』の編集も務める。地域に根差した弁護士業務を行うかたわら、少年事件や犯罪被害者支援、高齢者障がい者支援なども積極的に行っている。

インタビュアープロフィール
浅見理都

(あさみ・りと)


漫画家。1990年、埼玉県生まれ。『第三日曜日』で第33回MANGA OPEN東村アキコ賞を受賞。『イチケイのカラス』は自身初の連載(モーニングで連載、2018年24号〜2019年14号)。


こちらの記事もおすすめ