5 鍵を壊してゴーンさん使用の部屋を捜索
大出 鍵を壊したところもありましたね。
弘中 ゴーンさんに使ってもらっていた部屋は、中に入るのに鍵がありました。その鍵は検察は入手していなかったので開けられなかった。それで、検察官はそこを壊しました。
小佐々 鍵屋を呼んで、いわゆる電動ドリルで壊しました。
後藤 その部屋の中で、キャビネットの鍵を開けるとようなことがあったのですか。
弘中 中のキャビネットも鍵がかかっていたのですが、それは鍵屋を使って、ピッキングみたいなことをして無理にこじ開けました。
小佐々 ゴーンさんが使っていた部屋の鍵については、1回目の捜索のあとに、また来るような気もしていたので、弁護士がいないときに来られたら困ると思って、鍵をかけておいたのです。
大出 報告によれば、検察官とのやりとりがあって、「それ以上、拒否するなら強行しますよ」ということで、多勢に無勢で阻止するわけにもいかなかったということのようですが。
弘中 物理的に抵抗すれば公務執行妨害だと言って弁護士を脅かしたということです。
小佐々 そうしたやりとりは、事務局のスペースに関してもありました。たまたまその日事務局員が1人休みだったのですが、事務局員はそれぞれ自分のキャビネットがあり、その事務局員のキャビネットも個人的なもので鍵がかかっていたので、「開けてほしい。開けてくれ」と言われたのですが、こちらは開けようもないし、「開けません」と言ったら、検察は鍵屋を呼んで、最終的に開けました。
後藤 キャビネットの中で、彼らは何か発見したのですか。
小佐々 ゴーンさんが使っていた部屋のキャビネットも、事務局のキャビネットも、中を見ることはしませんでした。開けるけれども、中のものは弁護士に確認してもらうということでした。
大出 それは、どういう意味を持っていたのでしょうか。
小佐々 ゴーンさんが使っていた部屋には2つキャビネットがあり、1つめのキャビネットについては、最初は検察官が自分で開けて、中に重なっているものを開いたりしていたのですが、2つめのキャビネットに差しかかったところで、そこには明らかに公判準備のために使っていたものがあったので、「ここは完全に駄目です」と言ったところ、こちらに「確認してください」という流れになって、われわれは一つひとつは見ないで、ぱっと見て、「これは押収拒絶対象物なので、押収拒絶します」と言ったら、「分かりました」と閉めて、次の扉を開けて、同じようなことをしていました。本当に儀式です。
大出 そうすると、後半は鍵を壊しただけみたいな話なわけですね。前半は鍵がかかっていないものの中を見ていたということですか。
小佐々 そうです。横で私たちが見ているので、何か本当に支障があるものだったら止められる状況だったのですが、確かに、書類をペラペラとめくるようなことはしていたように思います。
途中で、検察官から「内容を一瞥しているだけだ」という言い方がありましたが、こちらからは「一瞥って何だ」と、「あなたたちのやっていることは一瞥を超えているのではないか」と言いました。
大出 それは、形式的には、検察は拒絶できるものかどうかを、確認したいという趣旨であったということだったのでしょうか。
小佐々 私の理解では、検察官は捜索差押対象物かどうかを判断するために見ていたのではなく、捜索差押対象物を捜索しているようでした。それに対して、こちらは、押収拒絶権をどう行使するかで対応していたと思います。
6 検証許可状は請求したのか
後藤 この件では、検察はパソコンの検証許可状を請求していたのでしょうか。それは却下されたということですか。
弘中 1回目の1月8日の廊下で帰ってもらった捜索押収のときと2回目の29日の捜索押収のときとの間に、検察が検証申請を裁判所にしたようですが、それは裁判所に却下されたようです。
後藤 それは報道でわかったことですね。
弘中 裁判所からの連絡もありませんでしたから確認はしていません。
小佐々 貸与パソコンの検証だったのではないかと思います。
後藤 そのことを新聞記者はどうして知ったんでしょうか。
大出 裁判所がリークするとは考えにくいですから、検察からとしか考えられないですね。
小佐々 リークというか、もしかしたら、通常の定例の記者会見かもしれないですけどね。
後藤 いずれにしても、その裁判所の判断にどういう理由があったかは確認できないわけですね。
小佐々 こちらはわかりません。
大出 事実経過はだいたい以上のようなことかと思いますので、次に移りたいと思います。
(2020年05月06日公開)