『オアシス・インタビュー』第2回笹倉香奈氏に聞く

【3/3】えん罪救済センターとSBS検証プロジェクト は何を目指すのか

実務家と研究者との連携

インタビューアー:小石勝朗(フリーライター)


4 乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)への取組み SBSへの関心 小石 えん罪ともつながっていると思いますが、今、笹倉さんの一番の研究テーマのひとつが、乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)だと聞いています。『季刊刑事弁護』94号にも特集が組まれていましたが、SBSとはどんなことでしょうか。 笹倉 アメリカやイギリスで1970年代に提唱された医学理論で、目立った外傷がないにもかかわらず、乳幼児の硬膜下血腫や網膜出血があれば、揺さぶり行為によってそれらの症状が生じたと考えられるという仮説です。英語のShaken Baby Syndromeの頭文字をとって「SBS仮説」と呼んでいます。この理論が1980年代、1990年代にかけてアメリカにおいて、硬膜下血腫、網膜出血に加えて脳障害(いわゆる3徴候)が生じた場合、他の死亡や傷害の原因がない場合は揺さぶられたことによって死亡や傷害が生じたものと推定できるという理論に発展しました。養育者が低位落下による事態と主張しても、低位落下では3徴候は生じないから養育者は嘘をついている、虐待による揺さぶりだとされるのです。 このようにして、死亡したあるいは傷害を負った乳幼児に最後に接した養育者が揺さぶりによる加害を与えたものと推定できる、というSBS虐待理論が展開されました。日本でも、1990年代以降、アメリカでの議論の影響により、SBS仮説に基づく虐待論が、一部の医師によって推進されました。2010年ころから、これらの医師による鑑定に基づき、警察・検察が養育者を積極的に訴追するようになり、有罪判決が出るようになりました。 日本にもSBSの刑事事件があることには気付いていたのですが、えん罪救済センターの立ち上げもあってなかなか動くことができません……

(2019年03月20日公開)


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