3 事件調査型
以下では、カナダと英国で行われている事件調査型の誤判原因究明の事例をそれぞれ紹介したい。
⑴ マーシャル委員会とカナダ((詳細は、拙稿「カナダ司法界を揺るがしたマーシャル事件——王立委員会報告書とカナダの刑事司法」季刊刑事弁護5号(1996年)148頁、前著106頁等参照。))
1971年6月4日、当時17歳だった、少数民族の出身であるドナルド・マーシャル・ジュニアは、17歳の黒人少年、サンディ・シールを殺害した容疑で逮捕、起訴された。ノヴァスコシア州内の公園で、シールとマーシャルは二人の男たちとの間で争いが起こり、シールが刺されて死亡するという事件が起きていた。マーシャルは警察に二人の男たちのことを警察に話したにもかかわらず警察はその二人を捜索することはなかった。代わりにマーシャルがシールを刺したことにされ、裁判で終身刑を言い渡されてしまう。
ノヴァスコシア州はカナダ東部に位置する半島を中心とした地域で、英語風にいえばNew Scotlandとなる。人口は100万人程度でスコットランド系が多い。地政学的には大西洋の玄関口となり、州都ハリファックスは交通網でも重要な拠点となっている。カナダは連邦制を取っていて、同州も最高裁判所(Court of Appeal)、地方裁判所(Supreme Court)、地区裁判所(Provincial Court)に分かれる。刑事事件は重い犯罪は地方裁判所で、軽い犯罪は地区裁判所で扱われる。少年司法裁判所(Youth Justice Court)は地区裁判所に併設される。
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(2025年03月26日公開)