『オアシス・インタビュー』第1回村木厚子(元厚生労働事務次官)氏に聞く

【後編】罪を犯した人と私たちはどのように共生できるのか

自分の体験から考えたこと

インタビュアー:菅原直美(弁護士) 2018年8月9日 現代人文社会議室


3 罪を犯した人たちと共生する社会への道のり

「共生社会を創る愛の基金」創設とその活動

——後半はちょっと話題を変えて、村木さんが現在、力を入れている活動についてお伺いします。「共生社会を創る愛の基金」とか、「若草プロジェクト」という社会的な活動をされていらっしゃいますが、それぞれどのような活動をされているのでしょうか。 

村木 共生社会を創る愛の基金は、端的に言うと、累犯障害者の人たちの支援なんです。そのきっかけについて少しお話しします。さっき言ったように、郵政不正事件では、不当な取調べをなぜ検察がやったかが、「検察の在り方検討会議」では明らかにはならなかったので、その原因を明らかにすべく国家賠償の裁判を起こしたんです。ところが、国はこちらの主張を認諾してしまい、裁判の場で争えなくなって、何の事実も出てこなかった。裁判費用とか除いて、結局、手元に3,333万円残ったんです。しかし、ものすごく腹が立ちました。賠償金は「これも税金だろ」っていうことでね。 

——被告が、この場合は国ですが、認諾してしまえば、それで裁判は打ち切りで、原告に請求額をそのまま支払うことになりすからね。結局、捜査や取調べの実状が明らかにならなかったわけですね。

村木 あとで弁護士の弘中先生や信岡先生と、「失敗したね」って顔を見合わせたんです。ものすごい高い額を吹っ掛けとけば、認諾できなかった……

(2018年10月26日公開)


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