困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで<br>第10回

困ったときの鑑定──裁判からトラブル解決まで
第10回

証明力が高い筆跡鑑定とは?

齋藤健吾 株式会社齋藤鑑識証明研究所代表


 みなさま、こんにちは! 齋藤鑑識証明研究所の齋藤健吾です。

 前回から、この連載のテーマを「指紋鑑定」から「筆跡鑑定」に変えたのですが、今回は筆跡鑑定の第2回目です。みなさんにとって日常的に鑑定を利用する機会は少ないと思いますが、筆跡鑑定は指紋鑑定に比べて利用される機会は多いです。例えば、遺言書の本物か偽物かの鑑定、契約書の偽造、離婚届・養子縁組届など役所提出資料の偽造などがあり、文字は身近な存在かと思います。

1 今回のテーマ

 今回のテーマは「証明力が高い筆跡鑑定とは?」です。鑑定において証明力は最も重要なものであり、証明力の高い鑑定書は何かを主張する場合に強い武器となります。また、前回お伝えしたように、筆跡鑑定は統一された鑑定方法が確立されていなため、鑑定人によって証明力に差があるのが現実です。もし、筆跡鑑定が必要になった際には、証明力の高い筆跡鑑定書を確保できるよう、良い鑑定書の見分け方を紹介します。

2 証明力を作るのは鑑定基準か? 鑑定人か?

 証明力の高い鑑定を作成するためには、理路整然とした鑑定基準か? または実績・経験の多い鑑定人か? これは完全に鑑定基準になります。鑑定を行うにあたり理想的な状態は、証明をする論拠が明確に示されている鑑定基準があり、誰が鑑定を行っても同じ結論となる状態です。しかし、筆跡鑑定は統一された鑑定基準がないため、各々の筆跡鑑定人が独自の鑑定基準を発案して運用しています。そのため、人によって証明力に差が生じてしまいます。

 さらに、筆跡の世界は1人の人物が書いた文字であっても、筆記した条件によって変化します。また、意図的に誰かの文字を……

(2024年08月19日公開)


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