──TATAの10年間の活動によって、法廷技術を身につけた弁護人が、今、法廷で活躍していると思います。実感として、裁判に大きな変化があったと考えていますか。
高野 私たちのワークショップを受けて、法廷技術の価値を知り、自己研鑽をする。その結果、裁判員裁判で結果を出す、無罪判決を取る、あるいは、非常に困難な事件で執行猶予判決を取るという成果を挙げている弁護士がどんどん増えています。そういった意味では、裁判員裁判の存続とその活性化に対して、一定の役割を果たしていることは間違いないと思います。ただ、それが十分なのかというと、まだ十分ではない感じがします。
──それは、裁判員裁判の限界ということですか。
高野 裁判員裁判の限界というよりは、それを運営している現在の裁判官の考え方とその権限に問題があるような気がします。具体的に言うと、日本の職業裁判官は、結局、自分たちが仕事をしやすいようにしている。つまり、裁判員が評議室の中で裁判官にあまり逆らわなくなるように運営しているのではないかということです。
一つ例を挙げると、裁判員制度の発足と同時に、公判前整理手続という制度ができました。その中身の一つに、争点整理というのがあります。どういうことかというと、訴因を直接事実認定するのではなく、訴因の中の主要事実を認定するための「間接事実」なるものを検察官に主張させます。時には裁判官は、それを弁護側にどう考えるのかとぶつけて、その間接事実に対する争点をどんどん減らしていきます。
これは「裁判員の負担を少なくするんだ」という触れ込みで始まりましたが、そんな……
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(2024年07月11日公開)