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筆者が独房で記したメモの一部分

 逮捕から一週間(勾留から5日)が経ったころ、拘置所の閉鎖的な環境も被疑者の心を蝕むのに影響しているということに気づいた。

 このころに記した次のメモは、鬱々として気分が晴れない原因を考えたときのものである。

・拘置所の生活は、陽の光を浴びることが(一日のうちに一度も)ない生活なのだ
・広い空間・オープンな場所に行けない

 → 閉鎖された狭い空間にいることがほとんど

 このような閉鎖的環境が被疑者・被告人の精神に与える影響については、(下)で詳しく述べたい。

 さて、勾留が10日に近づくにつれて、「勾留は延長されてしまうのだろうか」という不安と、「家族は元気だろうか」という心配とが、日に日に強くなっていた。

 そんな心理状態を見透かしたかのように、勾留8日目(10月24日)、検察官は、午前から就寝直前まで、食事などの中断をはさみつつも1日がかりで取調べをしてきた。この日の取調べ時間は4時間54分に及んだ。

 この日のメモには、「身柄拘束が10日に近づいてきたのを機に、攻勢を仕掛けてきたのだろう」と感想を記している。

 勾留10日目前後の取調べでは、人格攻撃が苛烈になっていた。たとえば次のような罵倒を受けていた(いずれも10月26日〔勾留10日目〕)。

・「ほんっとに、危なっかしいっすねえ、ほんとに。不安定すぎて、とても4年、5年、弁護士やってるとは思えないんですよねえ。あなたの親族の方々も、かなりほわんとしてて、事の重大性をどこまで認識しておられるのかねえ。……全然、全っ然ですよねえ。全然、わかっておられないね、あなたも含めて」
・「ガキだよね、あなたって。子供なんだよね。子供が大きくなっちゃったみたいなねえ。……発想が子供なんすよね。昨日の押収手続見てても、なんか大きい子供がいるなあみたいなね。ちょっとびっくりした感じですよね(笑い)」
・「空回り。あなたのやってることは空回りなんすよ。やってたこともね。今もそうだし、過去もそうですよ。なぜかというと、繰り返しになるけど、本質を見ようとする能力、努力、いずれも足りなかったからですよね。すべてが場当たり的。しかも、ちょっと歪んじゃってるわけですよね。……超、筋悪ですね。まさに刑事弁護を趣味でしかやれない人。プロではない」
・「ものすごい抽象的なんですよね、あなたの発想っていうのが。お子ちゃま的。……短絡的、お子ちゃま的なんですよ、あなたの発想っていうのは」

 このような取調べを毎日数時間にわたって受けさせられ続けて、精神面でも肉体面でも、疲れは溜まっていった。その一方で、いいニュースは、相変わらず入ってこなかった。

 こうしたことから、このころの自分は、精神的にかなり不安定になっていた。

 勾留10日前後の時期のメモには、「取調室では、感傷的にならない」と自分に対して注意を書いている。これは、1人でいるときだけでなく、取調室で検察官と向かっているときでさえも、ネガティブな情報を吹き込まれると、様々な不安や疲れも相まって、感傷的な心境になってしまうからこその注意だった。

 この時期には、こんな注意喚起も記している。

・1つのことばかり考えているのは、精神衛生によくない
・まだ見ぬ証拠に脅えるのはやめよう

 裏返すと、この時期の私は、1つのこと(それもネガティブな内容)ばかり考えていたし、まだ見ぬ証拠に脅えていた。

 また、この時期、検察官は、①争っていると身体拘束が長期化して家族が困窮すること、②それは夫・父親として無責任であること、を繰り返し強調するようになった。このことについて、メモに「勾留が10日を超え、家族が恋しくなってきた時期を狙った、これも心理戦なのだろう」と記した。

 さらに、次のことも記している。

・検事のやり方は、被疑者を人間性の面(レベル)から批判し、その人間性が事件にも繋がっていると思い込ませ、事件も含めて全面的に自信を喪失させる、というもの
 →つまりは、マウンティングだ

 加えて、次のようにもメモしている。

・取り調べ中、Pの言うことに、頭の中でコメントしたり反論したりするのはやめよう。ただただ受け流そう
・取調室では、Pの話を真に受けない、共感しない

 裏からいうと、私はこの時期になっても、検察官が取調べで言うことに対して、真に受けたり、頭の中でコメントや反論をしてしたりしてしまっていた。

筆者が独房で記したメモの一部分
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(2024年03月23日公開)


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