連載 裁判所書記官が見た刑事弁護

裁判所書記官が見た刑事法廷 第21回

控訴事件と記録の整理

中村圭一 元裁判所書記官


 簡裁や地裁の書記官が嫌がることの一つは、「控訴」がされることでしょう。判決宣告が終われば事件は終わるのですが、控訴がされると記録を整理して、原則1か月以内に高裁へ記録を送付しなければならないからです。薄い事件の記録ならまだしも、記録が何冊にも及ぶ事件の場合は、かなりじっくりと記録の整理をしなければならず、相当な時間を要することになります。

 具体的にどのようなことをするかと言えば、記録のすべてをチェックリストに従って間違いがないかチェックしていきます。調書等に誤字がないか、書類が決められた場所に綴られているかなど、かなり細かい部分までチェックしていくことになります。間違いがあるからといって訂正するわけではなく、付せん等で明示し高裁に対して先行自白するようなイメージです。この作業を、担当書記官→主任書記官→首席書記官や庶務課長の順番で確認していきます。私が退職する直前までは、記録のすべてのページに丁数打ち(ナンバリング)をしなければならず、この作業だけでも結構な時間を要していましたが、私の退職直前になってようやく丁数打ちをしなくてもよくなりました。別のことに時間を費やすべきですよね。

 判決宣告から2週間の控訴期間がありますが、控訴提起の日を起算点として高裁への送付期限が決まりますので、判決宣告直後に控訴されると、それだけ早く記録の整理をしなければならなくなり、書記官は判決宣告直後の控訴を嫌がる傾向にあります。

 しかも、庁によるとは思いますが、支部の場合、高裁へ送付する前に地裁本庁へ送付して、地裁本庁の主任書記官に記録を確認してもらうというルールがある庁もありました。とすれば、実質2週間で記録を整理していっ……

(2024年01月11日公開)


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